世界の長寿地域で食べられている野菜
「ブルーゾーン」と呼ばれる世界の超長寿地域に暮らすすべての人が、まさにそうした食事(「低タンパク質/高炭水化物食」)を摂っている。
ブルーゾーンとは、ダン・ビュイトナーが2008年の著書『ブルーゾーン世界の100歳人に学ぶ健康と長寿のルール』で流行らせた用語だ。
ブルーゾーンの人々には、栄養以外にも、良好な社会的交流や身体的に活発なライフスタイルといった共通の特徴がある。だが興味深いことに、私たちの実験結果だけをもとに、彼らの食事の主要栄養素のバランスが健康寿命を延ばすことを予測することもできる。
ブルーゾーンの住民の中でおそらく最も有名なのは、日本の沖縄の人々だろう。沖縄は100歳以上の人口割合がほかの先進国平均の5倍である。サツマイモと葉物野菜を主体に、少量の魚と赤身肉を組み合わせた伝統的な沖縄食は、タンパク質比率がわずか9%(食糧難の地域を除けば世界最低水準)、炭水化物が85%、そして脂肪がわずか6%だ。
これは実験の最長寿命のマウスが摂取していた比率にほぼ相当する。伝統的な沖縄の食事を摂っている人は、肥満とほぼ無縁だった。その理由の1つは、食事の食物繊維含有率が高いからである。これは重要なことだ。食事に十分な食物繊維が含まれると、カロリーの過剰摂取を駆り立てるタンパク質レバレッジの効果が弱められる。
共通点は豊富な食物繊維
食物繊維は胃で膨潤し、消化速度を遅らせ、腸内微生物の餌になる――これらすべてが組み合わさって、空腹感を抑える効果がある。
この食物繊維の多くが、沖縄の人の主な炭水化物源であるサツマイモや、そのほかの野菜や果物に含まれているのだ。
残念ながら現代の沖縄の人々の食事内容は、伝統食から欧米型に近づきつつあり、それとともに肥満や糖尿病が増えている。
もう1つ、最近明らかになった、現代の基準からすれば考えられないほど健康的な人々が、心疾患の発症率が世界で最も低い、ボリビアのチマネ族だ。
チマネ族は伝統的な狩猟採集と焼畑農業を組み合わせた生活を送っており、食事の栄養構成はタンパク質14%、炭水化物72%、脂肪がわずか14%だ。主な炭水化物源は玄米、オオバコ、キャッサバ、トウモロコシ。これらは沖縄の人のサツマイモと同様、嵩高な食物繊維が豊富な植物性食品だ。