日本株はこれからどうなるのか。エコノミストのエミン・ユルマズさんは「日本の対外純資産は世界最大で、GDPの約1割を投資で得ているため、円の暴落は考えにくい。そのうえ日本株は相対的に魅力が増しており、世界の投資マネーは今後さらに日本に集中するだろう」という――。(後編/全2回)
※情報は5月22日時点のもの。
「有事の円買い」は起きるのか
(前編から続く)
日本円はスイスフランと並んで「安全資産」とされています。
市場の危機感が高まり、リスク志向が低下、つまりリスクオフになると、こうした安全資産に資金が集まります。いわゆる「有事の円買い」です。
いま市場の緊張感は少しずつ高まってきています。昨年よりFRBによる利上げが始まった結果、アメリカ国債の価格が下落、保有している金融機関に多額の含み損が発生しています。
これが原因で一部の金融機関では大規模な預金流出が発生、シリコンバレー銀行やファーストリパブリック銀行が破綻しています。
「リーマンショック級」なら円は買われる
ただ、足元のドル円相場は130円台後半と、円安水準で推移しており、今のところ「有事の円買い」は起きていません。
なぜか。アメリカ市場がまだ「リスクオフ」になっていないからです。むしろまだ「リスクオン」で、株などのリスク資産を買いに行っている状態です。
前回の記事でも少し触れましたが、アメリカ経済はまだ「バブル」です。
GAFAMの決算がイマイチだったにもかかわらず、GAFAM株を中心にハイテク銘柄が買われています。「AIの登場でハイテク銘柄はますます上がる」と思われているからです。
このような状態はまだリスクオフではありませんし、「有事の円買い」は起きません。
逆に、リーマンショックのような本当のリスクオフイベントが発生した場合、円が買われる可能性は高いと思います。
実際、リーマンショック時には大きく円高になりました。リーマンブラザーズ破綻前の2008年8月の時点では、ドル円相場は1ドル=110円程度でした。しかし9月にリーマンブラザーズが破綻すると、ドル円は下落し、08年12月には1ドル=87円まで円高になりました。