歯ブラシを縦に持ち、毛先の端を意識

イラストレーション=矢倉麻祐子

歯磨きは毎日しっかりしているし、自分はきちんと磨けているから大丈夫と安心している読者も多いだろう。「歯磨きをきちんとできていない人がほとんどです」と首を振るのは、とりだい病院歯科口腔外科の石見香穂歯科衛生士である。

「感覚として磨けた気がしていても、実はブラシの角度が全然合っていない人が多いんです。私が診ている患者さんだけでも、7、8割ぐらいは歯の裏側や歯の間が磨けていない」

石見によると、歯磨きにおいてブラシが適切に当たっていないことが多いという。

イラストのように、まずは正しいブラシの持ち方と当て方を意識する。力加減はあくまでも弱め。そしてしっかりとブラシの毛先を歯に当てることが重要だ。

「歯と歯の間を磨くときは、ブラシを面で押し当ててしまうと毛先が外に広がってしまい隙間まで入っていかないので、歯ブラシを縦に持って、ブラシ全体を使うのではなく毛先の端、1束とか2束を意識して、溝に沿って磨くのがポイントです」

磨き忘れを防ぐためには、自分なりに順番を決めて1本ずつ丁寧に磨いていくといい。時間については、一般的に5分以上はかけるようにとよく言われているが、それを毎食後に必ずやるとなるとなかなか難しい。

1日1回、全体をキレイにすればいい

イラストレーション=矢倉麻祐子

しかも毎回5分間やっていれば安心かといえばそうではなく、正しく磨けていないと、たとえ30分かけても全く意味のない歯磨きになってしまうと石見は言う。

「無理をすると結局続かないので、患者さんには1日の間に1回、全体をきちんと綺麗にしてくださいと伝えています」

鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 13杯目』
鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 13杯目』

自分の生活スタイルに合わせて朝晩だけでもいいし、もし日中忙しくて磨けなかったのなら、夜に5分といわず10分ぐらい時間をかけてしっかり磨くなど、柔軟に考えればいいのだ。

とりだい病院の口腔外科では、なるべく毛先が軟らかく、ヘッドが小さい歯ブラシを推奨している。毛先が硬いと歯茎に磨き傷がついたり、歯茎が下がる原因となる。ヘッドの大きさについては、スムーズに奥歯まで届かせるためには、小ぶりなものの方が適している。

「歯磨き粉は、ケアのメインではないです。歯磨き粉なしでもいいですよとも言います」

つまり、歯に付いているプラーク(歯垢)はかなり吸着力が強いので、ブラシで物理的にこすらねば落ちないものなのだ。歯磨き粉のミント味でスッキリして、磨けていないのに磨けている気になってしまわないように注意が必要だ。

まずはセルフケアがきちんとできることが大切だが、自分だけで完全にケアをするのはなかなか難しい。そのためにもかかりつけの歯科医院をもち、定期的にプロフェッショナルケアを受けることを石見はアドバイスする。

自分自身で落としきれないプラークを取ってもらい、同時に磨き方の指導もしてもらう。それを繰り返しながら最終的にセルフケアを確立していって、口の中の健康な状態をキープできるようになれば、全身の健康を保つことにもつながるのだ。

(文=西村隆平 写真=中村治 イラストレーション=矢倉麻祐子)
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