特別列車だけでは路線は生き残れない

東急とJR北海道・貨物の取り組みに、JR西日本・四国も注目したようで、2024年1月から3月にかけて、「THE ROYAL EXPRESS」は四国・瀬戸内エリアに遠征する。岡山―高松―松山方面を周遊する予定である。

直流電化エリアながら、JR四国予讃線は断面が小さいトンネルが多く、「THE ROYAL EXPRESS」のパンタグラフでは走行できないため、岡山―高松間はJR西日本の電気機関車、それ以外のJR四国エリアではJR貨物の電気機関車の牽引になるという。

JR北海道も含め、このような取り組みは画期的であり、話題性がある半面、鉄道の活性化につなげるには、「北海道そのもののファン」「四国そのもののファン」を増やすことに尽きる。“特別な列車”ではなく、“日常の列車”そのものが観光地になり、満員にならないと路線の存廃問題につながる恐れがある。

現にJR四国の西牧世博社長は2023年4月25日に3路線4線区の存廃について示唆した。その中に特急〈伊予灘ものがたり〉が好評を博す予讃線向井原―伊予大洲間が含まれており、“特別な列車”を強調しているだけでは路線の長きにわたる存続につながらない。

巻き返しを図るJR北海道

JR北海道は単独での維持が困難なローカル線の廃止を進めた一方、巻き返しを図っている。

2020年からキハ261系5000番台を2編成導入し、「観光列車に活用できる特急形気動車」として、観光列車やイベント列車、繁忙期の臨時列車及び定期列車の代替輸送用としている。このうち、ラベンダー編成は北海道と国の支援を受け、北海道高速鉄道開発株式会社が所有し、JR北海道が無償貸与を受けている。

JR北海道が多目的車両として導入したキハ261系5000番台
筆者撮影
JR北海道が多目的車両として導入したキハ261系5000番台

さらに同様の展開でH100形の一部も仕様を変更したラッピング車両として、根室本線釧路―根室間、釧網本線、石北本線、富良野線にも投入された。今後も室蘭本線、日高本線、宗谷本線、根室本線の別区間にも投入される予定だ。

H100形の一部は北海道高速鉄道開発株式会社が保有し、ラッピング車両に充てられている(写真はラッピング前の姿)
筆者撮影
H100形の一部は北海道高速鉄道開発株式会社が保有し、ラッピング車両に充てられている(写真はラッピング前の姿)

2020年夏から北海道の支援による、在来線の特急自由席も乗り放題の「HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊パス」(1枚1万2000円)が不定期で発売されると、累計で約20万9000枚の売り上げを記録する大ヒット商品となった。ただ、道内周遊の促進を目的とした乗車券のため、北海道新幹線はエリア対象外である。

しかし、北海道新幹線1日平均の乗車人員は減っている。2016年度6200人、2017年度5000人、2018年度4600人、2019年度4500人、2020年度1500人、2021年度1700人という状況なので、今後はJR東日本と連携し、青森県内の主要駅での発売を検討してもいいのではないだろうか。

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