ご本人への哀悼の意を表して、またご遺族には決して失礼があってはいけないので、ものすごく神経を使います。ましてや、歴代で最も長い期間、激務である総理大臣だった方への追悼となると、一字一句たりとも失敗があってはなりません。

志半ばで亡くなられた安倍さんに、当初の原稿では「安倍さん、勝ち逃げはないでしょう」と呼びかけるような一文を用意していました。しかし、安倍さんは仲間の選挙の応援演説中に銃撃されて亡くなられたのであって、決して逃げたのではない。

マイクを持って未来を語ろうと前を向いているときに背後から襲われたという無念を強く感じていくうちに、逃げるという言葉は失礼だと思い直して、「安倍さん、勝ちっぱなしはないでしょう」と言い換えたんです。

私にとっては勝ったまま去られてしまった感じはあります。もう一度、真剣に勝負したかったですね。

政権交代が起こり得る政治をつくりたい

日本の国会議員の選挙制度自体は二大政党制を志向してはいるんです。自民党はたしかに強いんですが、野党の側がもう少し力を合わせて、一強他弱の状態を克服して、もっと緊張感のある政治をつくっていきたい。そして、時には政権交代も起こるという政治をふたたび実現したいと思っています。

インタビューに応じる野田佳彦氏
撮影=遠藤素子
ときには政権交代も起こる「緊張感のある政治」を実現させたいと意気込む野田氏。

人前でまったくしゃべることのできない学生の頃、金権政治を変えようという精神で自民党を離党した若い議員たちによって結成された新自由クラブのボランティア活動を始めたことが私の志であり、原点なんです。

私、顔は自民党のようだとよくいわれるんですが、自民党に入ったことは一度もないんです。有力な仲間がずいぶんと自民党に行ってしまいました。居場所を失ってしまったからなのかもしれません。

しかし、私はあちらへは行きません。入らないと決めていますから。野党の中で保守的な、ライトの守備位置に立ちながら、時にはファウルフライであっても全力で捕りに行こうと常に準備しています。

自民党を支持する穏健な保守層もとりこんでいって、無党派層にも政権交代可能な勢力であると向き合ってもらえるようなチームをつくるために、それができるまでは、死んでも死にきれないという覚悟を持っていまもやっています。

もうひと踏ん張りしなければなりません。

(聞き手・構成=ノンフィクション作家・樽谷哲也)
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