接客に効率は求めない。「会話が盛り上がっているなら、服が売れようが売れまいが楽しんで帰ってもらえばいい。人が来てくれなければ、どんなに効率のいい仕事をしても無意味ですから」。

そんな藤本さんのファンは多い。千歳台店時代は10人ほどの客が藤本さん指名で来店。今でもわざわざ渋谷まで足を運ぶ客もいる。

その接客術や指導が認められて、半期に1回、全国3万人のスタッフの中から13人、上位わずか0.04%の優秀なスタッフに与えられる「エクセレントCSスタッフ賞」に輝いた。圧巻は、他のスタッフの知恵も集めた「サービス事例集」。シャツを提案するときはジャケットと合わせて見せる、買い物袋を留めるテープの端を少し折り返すといった小さな気遣いは、今や全店に広がっている。

指導の成果は客からの店舗評価にも表れている。渋谷道玄坂店オープン日、都心大型店としては初めてクレームゼロを達成。さらにオープン月に寄せられた褒め言葉とクレームの比率は10対1が目標のところ、27対1を達成した。これだけ好評価が寄せられること自体、異例だという。

ノウハウをみんなで共有し、店舗の評価を高めていく。それが藤本流だ。

「決めトーク」は
堅苦しい「いらっしゃいませ」は封印。必ず「こんにちは」と挨拶して親近感を出しています。

自己啓発の仕方
今、興味があるのは、接客サービスマナー検定。また、救急法救急員資格を持っていて3年ごとに更新しています。

優先順位のつけ方
お客様が最優先です。ほかの業務中でも退社間際でも、お客様から呼ばれたら飛んでいきます。

服装、化粧の仕方
お客様から「これもユニクロ?」と聞かれるくらいユニクロっぽくない着こなしを心がけています。「春らしく」とか「大人カジュアル」とか毎日テーマも設定。メークはCA時代の経験から、眉もチークも基本的に丸く仕上げて柔らかい印象に。ネイルは会話のきっかけにもなるので必須です。

記憶に残る失敗談
失敗はありませんが、入店すぐにサービス指導係になったときは、周囲に認められるよう実績をつくることに苦労しました。

※すべて雑誌掲載当時

(大沢尚芳=撮影)
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