佐川急便グループはヤマトホールディングスと並ぶ運輸業界の二強だ。単体の売り上げは約8029億円(2009年3月期)、従業員数約3万8000名の巨大企業である。(※雑誌掲載当時)
佐川急便と聞くと、私たちの頭に浮かぶのは冬でもシャツの袖をまくりあげて町を疾走する体育会系の男性ドライバーの姿だ。しかし、同社には現在1700名(全体は約3万名)の女性ドライバーがおり、彼女たちも男子に負けず「佐川ダッシュ」しながら、荷物を運んでいる。
大西由希子さん(33)はまだ女性ドライバーが40名しかいなかった13年前に入社した。最前線で荷物を運び続け、担当地区の売り上げを伸ばし、二度全国最優秀社員賞を受賞している。06年には同社初の女性営業管理職となり、今年3月までは熊本支店で十数名の部下を持つ営業課長だった。4月からは勤怠管理、コンプライアンスを担当する安全推進課課長となり、支店全体に目を配っている。
延岡出身の彼女は高校卒業後、ゴルフ場で2年間キャディをやっていた。キャディを辞めて地元の運送会社でアルバイトをしていたある日、新聞を開くと「女性ドライバー募集」という広告が載っていた。
「これだ、と思いました。佐川急便のドライバーはきびきびとしていて、自分もあんなふうに働きたいと思っていました。そして、何よりも私は飛脚のマークが大好きでした。あのマークをつけたトラックを運転したいと思った」
延岡店に配属された大西さんは当初軽四輪に乗り、4年後念願の2トントラックを操るようになる。
「配送の仕事は支店によってまったく性質が違います。都市の店舗は荷物の数が多く、配達の距離は短い。一方、地方の店舗は広い地区を走り回って集配しなければなりません。延岡店では1日に約400個の集配をし、配達の合間に飛び込み営業をしていました」