「新規のお客様の場合、面談する最初の数秒間が勝負なんです。求められていることが何かわかれば、壁は一気になくなります」

フォルクスワーゲン
VW東京・足立支店 販売係長
福田裕子

聖学院大学卒業(小学校から大学まで聖学院)。「街を走るクルマが全部VWになればいい」。

強い目力(めぢから)で、冷静に話す。入社9年目になる福田裕子さんによれば、新規来店客のタイプは主に2つ。一つは、VW車のDSG(ダイレクト・シフト・ギアボックス)などのメカを求めてくる人。もう一つは、生活の中にワーゲン車をと考えている人だという。

「メカを求めている人のほうが、営業は簡単です。性能を説明していくと商談が決められますから。一方、生活スタイルは多様であるだけに難しい。デザインや色、さらにドライブのシーンなどをお話ししています」。

チラシや手書きの手紙を配布することはしても、飛び込み営業はしない。来店客に注力する手法だ。2007年の販売台数は94台、08年は93台。リーマンショックの影響が残った2009年は88台だが、1200人を超えるVW販売の従業員中、全国3位(女性では1位!)の快挙を成し遂げる。販売の7割以上は既存客だというが、2010年は4月までで33台を売った。

新規客、既存客にかかわらず、決めていることが一つある。それは、「できる限り、1回の面談で契約してもらう。会ってお話をするのは3回が限度。それ以上だと、互いに緊張感がなくなるから」。

初めての来店客が、その場で決める所要時間は、3時間が平均。クルマは住宅や保険に次いで高い買い物といわれるが、彼女の顧客たちは野菜を買うかのように短時間でクルマを決めていくのだ。

「展示車両を眺める様子などから、メカなのか生活なのかを判断します」。面談が始まれば、早ければ10分ほどで「いける」という手応えを掴める。ただし、生活スタイル派の場合は、国産車を含めて検討している場合が多く、話は長くなりがち。でも話を聞きながら試乗してもらう段階までくれば、勝率はかなり高くなる。「車両性能は、競合車に負けません」。試乗の印象がよければ、査定後、クロージングに入っていく。「お客様に応じて、口調や話し方、リズムを全部変えます。こうすれば売れるといった方程式はありません。聞き上手を心がけています」。