反対しているのは自民党でも「一握り」

法律で差別を禁止することに、反対する政治家がいるのはなぜか。

松岡さんは、伝統的な家族観を推進する神道政治連盟や日本会議、旧統一教会などの右派勢力に支持されている政治家の一部が、「差別を禁止すると同性婚を認めざるを得なくなる」と考え、強硬に反対していると説明する。

「父親が頂点に立ち、“女・子ども”はそこに付き従っていくという家父長制をベースにした家族観が根強く、それに反するものは排除したい。そのため夫婦別姓や同性婚に反対しているのだと思います」

ある自民党の政治家もこう話す。

「反対しているのは、日本会議と神道政治連盟に支援された一部の議員で、全体の中ではほんの一握り。みんな比例で当選しているから、支持団体の意向に沿わないと選挙で勝つことが難しくなるのだろう」

過半数は法案に「賛成」

時事通信が3月に行った世論調査によると、LGBTなど性的少数者に対する理解増進法案を今国会で「成立させるべきだ」と答えたのは50.8%。「成立させるべきだと思わない」と回答した16.9%を大幅に上回っている。自民党支持者の間でも、「成立させるべきだ」は46.6%にのぼり、「成立させるべきだと思わない」と答えた21.1%の2倍以上だった。また、産経新聞社とFNNが2月18、19両日に行った合同世論調査によると、慎重論が根強い自民党の支持層でも、57.2%がLGBT理解増進法を「成立させるべきだ」と答えている。他の多くの世論調査でも、LGBT法案や同性婚に過半数が賛成している。

経団連も差別禁止や同性婚に賛成しており、3月には経団連の十倉雅和会長が、法整備の遅れについて「恥ずかしい」とコメントしている。

3月16日には、日本以外のG7の6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使が岸田首相に対し、LGBTの人権を守る法整備を促すよう書簡をまとめていたこともわかっている。アメリカのエマニュエル駐日大使もメディアのインタビューに対し、差別禁止を定めた法律がなく、同性婚を認めていない日本に対して「早期に法律を制定すべきだ」と語っている。現在の状況は、日本政府だけが国内世論や経済界の意向を無視し、先進国の趨勢からも取り残されているように見える。