逆に、名門大学でもボストンのハーバード大学やMITはさっぱりだ。ボストンの冬は極寒で、散歩できない。街中で投資家と知り合うといった偶然が起きづらいのだ。また、私は原子力潜水艦スレッシャー号の沈没原因を研究していたが、軍事研究であるため厳しい守秘義務があった。ボストンは、このような機密性の高い研究が多く、仮に出会いの場があっても気軽に情報交換できない。これでは人の出会いから新しいビジネスは生まれない。

日本も、ビジネスマッチングを促進し、起業を増やすためには「出会い」に注力すべきだ。偶然の出会いは、起業家や研究者が集う大学や研究所、彼らが暮らす住居、ぶらぶら歩くボードウオーク(板張りの遊歩道)で起こる。

千代田区六番町の100坪ほどの地下室こそが日本では「起業の聖地」

もっとも、ベンチャー企業を生むのに必ずしも広大な土地が必要ではない。私は自分が経営するビジネス・ブレークスルー大学(BBT)とその傘下のアタッカーズ・ビジネススクール(ABS)がある、千代田区六番町の100坪ほどの地下室こそが日本では「起業の聖地」だ、と周辺の人には言っている。実際5000人ほどの卒塾生が800もの会社をつくってくれたし、そのうちMIXI、弁護士ドットコム、鎌倉新書、アイスタイル、クラウドワークス、Rettyなど16社がすでにIPOしている。

最近では、従業員12人のpringがGoogleに高値で買収されている。これにエムスリーやDeNAなど、マッキンゼー時代の人材を加えれば、起業家養成では間違いなく大きな貢献をしていると思う。しかし、それは自慢することではなく、現状の日本政府のやり方に対する激しい怒りになっているのが現実だ。

BBTとABSの教室は、“100坪のスタンフォード大学”といっていい。私の学校では、鉛筆すら売った経験がないような経営学者が講義をするわけではない。実際の起業家・経営者を部屋に呼んで、学生とディスカッションをし触れ合ってもらう。

初期投資の段階から関与していけば、年間1億円の投資だけでも16社をIPOに導くことができた。にもかかわらず、10兆円規模とは桁違いも甚だしい。多額の税金をドブに捨てるようなものだ。この怒りに関しては解決策も含め後日再度取り上げてみたい。

(構成=村上 敬)
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