別の言葉に言い換えたほうが伝わりやすい
このことばは、戦後になって使われるようになった語で、『新明解語源辞典』(三省堂)に次のように説明されています。
昭和24年(1949)7月に、毛沢東が発表した論文中に「要向社会主義一辺倒」とあったことから、北村徳太郎(芦田均内閣の蔵相)が、国会で「共産党は向ソ一辺倒、政府は向米一辺倒である。中立こそ大事なのではないか」と質問演説。それが契機となって、「一辺倒」が昭和25年の流行語となった。なお、「一辺倒」は12世紀中国の「近思録」の文をもとにしているといわれる。
「通り」には「通行・通過」のほかに、「人や車が通るための町なかの道」「声、音が伝わること」「それと同じ道筋をたどる、または同じ状態であること」などの意味があります。しかし、「一辺倒」は、どの意味の「通り」に結びついても意味をなしません。やはり、「通り一辺倒」は誤った表現と言えるでしょう。
では、質問にある「選択肢は一つではないんだ」という意味のことを言う場合、「通り一遍」と「一辺倒」の、どちらを使えばいいのでしょうか。
それぞれの語の意味を考えると、どちらの語でも意味がとおりません。どちらも使わずに「選択肢は一つではない」または「いくつもの選択肢がある」などと言いかえると意味が伝わりやすくなります。(山下洋子)