年齢が高くなるほど「おかしい」と感じる人が増える

すばらしい演技をした場合に、「今回の出演で爪痕を残すことができた」と表現することについて、どう思うか聞いたところ、「おかしい」と答えた人が全体の40%、「おかしくない」が37%、「どちらともいえない」「わからない」が、あわせて23%でした。

これを年代別で見てみると、20代では「おかしい」が18%と割合が低く、「おかしくない」が62%だったのに対して、50代では「おかしい」が49%、「おかしくない」が33%でした。

「今回の出演で爪痕を残すことができた」という表現についての各世代の回答
「今回の出演で爪痕を残すことができた」という表現についての各世代の回答(出所=『NHKが悩む日本語』)

このように「爪痕を残す」を良い意味で使うことについては、年齢によっても受け止め方が異なる傾向があり、若い人に比べて、年齢が高い人のほうが「おかしい」と感じる人が多いことがわかります。「爪痕を残す」は、もともとは、災害などに使われることが多いことばです。使う場面を間違えると、「変な“爪痕”を残してしまった……」と後悔してしまうかも。気をつけましょう。(中島沙織)

「歩きながら食べる」は「食べ歩き」ではない?

【食べ歩き】
Q.最近、「歩きながら食べる」の意味で「食べ歩き」を使っている例をよく耳にします。正しい使い方でしょうか?
A.「食べ歩き」は、本来は「土地の名物料理やめずらしい食べ物などをあちこち食べてまわること」(『日本国語大辞典第二版』小学館)の意味で使うことばです。
歩いてホットドッグを食べながら一緒に時間を楽しむ若い幸せなスタイリッシュな女性のトリミングされた頭の肖像画
写真=iStock.com/YakobchukOlena
※写真はイメージです

「食べ歩き」は、本来、右記の辞書にあるような意味で使われるのが一般的です。旅行雑誌やテレビの旅番組でも、「食べ歩きの旅」などがたびたび特集されますし、観光地でよく見かける、いわゆる「食べ歩きマップ」(おすすめの飲食店を地図にしたもの)は、観光客になるべく多くの店で地元の味を楽しんでもらうためのアイデアとして定着しています。

こうした使い方の「食べ歩き」は、一般的には「あちこちの店で食べて歩くこと」だと考えてよいでしょう。

もともと「食べ歩き」は、複合動詞「食べ歩く」が名詞になったものです。「食べ歩く」は、「食べる+歩く」と捉えることができますが、日本語の複合語では、「うしろに来るほう(太字部分)が主要部である」という原則があります。つまり、この場合は、「歩く」が主要部となり、焦点が「歩くこと」に当てられているため、意味は「あちこちの店で食べて歩きまわること」になるのです。