地方の過疎化「来店客の少なさ」に勝機あり

実は、僕は店舗スタッフとお客さまとの相性について、以前から違和感を持っていた。

それは全国に店舗があり、何十万人もの店舗スタッフがいる中で、自分の居住地や生活圏から通える店でたまたま出会ったお客さまとの間だけで関係性が閉じてしまうことだ。福岡の店舗に勤めていても、札幌のお客さまに商品提案のセンスがずばりはまることもあるだろう。

お客さま側でも、全く同じことが起きるはずだ。これまでリアルでは出会えなかったけど、相性が抜群にいい店舗スタッフとお客さまのマッチングができたら、もっとECは楽しくなるし、店舗スタッフの働き方も自由になる。

地方の過疎化は進んでいるが、地方店や郊外店は都心店に比べて来店客数が少ないことが多いので、実は投稿を量産するには適している。それだけオンライン接客で成功する可能性が高いということだ。

令和のカリスマ店員は地方で誕生する

実際、地方にいてもしっかり稼げる店舗スタッフが続々と登場している。

スタッフスタートを活用する全国の店舗スタッフを対象にした調査(21年9月~22年8月)では、1人当たりの年間平均売り上げが高い地域として、1位が富山県、2位が群馬県、3位が栃木県、4位が東京都、5位が石川県となった。

1人当たりの売り上げは富山県が平均約594万円、これは4位の東京都に約100万円の差をつけている。これからの小売りの成功条件は、ロケーションではない。地方の店舗スタッフには売り上げ成長余力が大きい。そんな結論にもつながる。

【図表1】地方店舗のスタッフはポテンシャルが高い
図版=小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)

必然的に店舗スタッフも場所に縛られる必要はなくなるはずだ。スタッフスタートによって円滑かつ効率的に、好きな時間や隙間時間に、24時間オンライン接客ができることで、店舗スタッフもお客さまも企業もみんながハッピーになれる。

そして、リアル店舗があることの重要性を改めて感じてもらえるはずだ。店舗スタッフがECでも活躍することで、閉店しなくていい店が増え、雇用が続く。

さらに、地方でカリスマ店員が頭角を現すことで、遠方からでもお客さまがリアル店舗を訪れてくれて、商業施設も盛り上がり、地方活性化にもつながる。実際すでに、僕らの想像を超えて幸せになってくれている人が増えている。

平成のカリスマ店員の時代と違って、「令和のカリスマ店員」は渋谷109だけにいるわけではなく、その「原石」が全国に存在している。

誰でも令和のカリスマ店員になれる時代であり、そのための手段を僕たちは提供している。いたずらに店舗を潰すのでは、彼女ら彼らの活躍の場を奪うことになる。スタッフスタートがもっと世の中に浸透していけば、都市部から地方へのIターンや、地元に帰って仕事を続けるUターンも活発になり、雇用が増えることで地方創生にもつながると信じている。