行方不明者の家族から最も聞かれる質問

「なんで、見つからないんですか?」

私が最も聞かれる質問だ。この問いを受けた時、私は細かく丁寧に状況をお伝えするようにする。

これまで捜索を実施した場所と、まだ捜索ができていない場所を地図上に示し、あらゆる可能性を考えながら丁寧にお伝えすると、「ああ、じゃあ、もしかしたら、これから見つかるかもしれない」という希望を再び持ってもらえる。だからこそ私たち捜索隊は絶対に発見を諦めてはいけないし、常に次の策を考え続けなければならない。

紙の地図とGPS受信機
写真=iStock.com/Eureka_89
※写真はイメージです

遭難発覚から時間が経つと、これからの生活のことを考え始めるご家族もいる。そのため、要望もケースごとに大きく異なってくる。「まだまだ探してほしい」というご家族もいれば、「残された私たちの今後の生活のことも考えると、捜索費用の負担が大きいです」と言われることもある。また「本人の携帯を解約したいんですが、行方不明者の場合、解約ができなくて困っている」と実務的な相談を受けるようにもなる。

依頼を受けた捜索について、LiSSの方から打ち切りの判断をすることは決してない。なぜならこれまでも、もう探すところはないというほど捜索を行い、次の策が見つからないと思わされるところから遭難者を発見したこともあるからだ。どんなに時間がかかっても私たちは諦めない。

「行方不明のままがよかった」と漏らす家族も

「1日や2日でご家族が見つかることは、ほとんどありません。捜索は長期化することが多いです」

依頼を受ける時、このことは必ず最初に伝えている。

ただ、遭難者が見つかるまで探し続けること、今後の生活の基盤を立て直すこと……。

目の前のご家族にとっての“出口”を考えることも、私の役割のひとつだと考えている。

遭難者が発見されると、それまで「生きているかどうか分からない」という曖昧だった状況が一変し、ご家族は「大切な人の死」の現実を突きつけられることになる。

「ご本人と思われるご遺体が見つかりました」とお伝えした時、「え……本当にうちの人ですか?」と反射的に戸惑いの言葉を発せられる方がほとんどだ。それまで「見つからない」という言葉を何度も何度も聞かされ、自分自身にも言い聞かせてきた。それが見つかったとなると、瞬間的に「よかった」よりも「見つかったって、どういうこと?」と困惑するようだ。「行方不明のままがよかった」と本音を漏らすご家族もいた。