ECに店舗スタッフの温度感を載せる
こうしてスタッフスタートは、店舗スタッフと企業の双方の目線をそろえて、それぞれにメリットを提供できるよう設計してきた。ただ、何も難しいことばかりを考えているわけではない。やっていることは常にシンプルで、「リアル店舗で求められていることを、そのままオンラインに置き換える」ことだ。
基本的に、インターネットやIT化とは時間や距離、場所の制限をなくして、人々の生活を便利にしていくものだ。リアルにおける「手紙」や「店舗でのショッピング体験」「現金」「切符」は、それぞれオンラインの「メール、メッセージ」「EC」「クレジットカード、電子マネー」「スイカやパスモ」に置き換わった。
ただし、利便性が向上する一方で、オンラインはリアルのワクワク感や温度感、情緒といったものを失いがちだ。象徴的なのがECだろう。ともすれば、ECはいきなり自動販売機のように殺風景になってしまって、何が面白いのか分からなくなってしまう。
だから、スタッフスタートでは、リアルでの「不」、不便や不満をオンラインで解決しつつ、利便性や効率化だけではない世界を目指してきた。具体的には、令和の時代ならではのリアルの面白さや素敵さ、温度感などをITに載せること。そのカギが、個性あふれる店舗スタッフの方々なのだ。
「疑似試着」ができるコーディネート投稿
象徴的なのが、スタッフスタートのメイン機能である「コーディネート機能」。
これは、まさに店舗スタッフの接客ノウハウをオンラインで生かそうとして最初に生まれたサービスだ。僕としては、単に素敵なスナップ写真をECに並べたいわけではなく、信頼できる店舗スタッフならではのコメントをしっかりと見せていくことで、店舗スタッフの「センスをDX(デジタルトランスフォーメーション)したい」という発想が強かった。
ECに対してリアル店舗の優位性は、試着室の存在が大きい。店舗スタッフが商品や着こなしを提案し、試着してもらう。それが似合えば買ってもらえるし、さらにコーディネートを提案してセット購買につながったりもする。
一方で、ECでは試着できないのが購買を阻害する大きな要因になっていた。それを変えたのが、店舗スタッフによるコーディネート投稿だ。自分に体形やセンスが似通った店舗スタッフを探せて、その店舗スタッフがEC上で「疑似試着」してくれている。そんな状態をつくり出せたことが、ECでの買い物をより楽しいものに変えたのだと思う。
このように僕は、リアルとオンラインを比較しながら、リアル店舗での接客要素を分解し、その中からECやオンラインでお客さまが求める要素をピックアップしてスタッフスタートをつくってきた。では、スタッフスタートが店舗スタッフの在り方にどのような変化をもたらすのか、詳しく見ていこう。