石炭を焚いてCO2を増やす日々が続く
さて、脱原発完成の翌日、4月16日の電力事情はどうだったかというと、日曜日だったので正午の需要はたったの5410万kW。ただ、電源の内訳は、3万本の風車と220万枚の太陽光パネルがそれほど役に立たなかったらしく、風力が550万kWで、太陽光が1180万kW。残り2240万kWは石炭火力が補った。
7時間後に陽が沈み、再エネがほぼなくなると、石炭・褐炭を焚き増したため、CO2の排出量は、脱原発の完遂後1日目にして、早くも記録更新を達成したという。しかも、それでも足りずにフランス(原子力)とポーランド(石炭火力)からの輸入にも頼った。これから、こういう日々が続くことは間違いない。
ドイツ政府は30年には再エネ80%を、45年にはカーボンニュートラルを達成すると豪語しており、緑の党は、石炭と褐炭の火力発電の全廃も2038年ではなく30年に前倒しするという。そのためには風車を毎日、4~5基建てるのだとショルツ首相。ほとんど妄想に近い。
また、35年からは合成燃料を除いてガソリン車の登録が禁止となるし、それより何より、来年24年からは、新築の家屋にはガスや灯油の暖房装置が付けられなくなる。さらに緑の党は、暖房に使う燃料は少なくとも65%が再エネでなくてはならないという法案も通そうとしており、その経済負担に国民は怯えている。
この理不尽に賛同できる人はさすがに少ない
車も暖房も生活必需品なのに、EV車や電気式のヒートポンプ暖房は、中流の家庭では負担が多すぎて買えないケースが続出するだろう。いずれ大きな社会問題に発展することは想定済みだが、緑の党は一切容赦なしだ。
ただ、緑の党はそこまでCO2を毒ガス扱いし、国民に多大な努力と経済負担を強いておきながら、他方ではCO2フリーの原発を停止し、その代替に石炭や褐炭火力を使い、何百万トンものCO2を放出することは何とも思っていない。この理不尽に賛同できる人はさすがに少なく、当然のことながら国民の間で不満が高まっている。
バイエルン州のゼーダー州首相(キリスト教社会同盟)も、これをあまりにも馬鹿げたことだと思っている一人らしく、自州の原発は再稼働すると宣言したため、社民党と緑の党がいきりたっている。ゼーダー氏曰く、「うちの原発は博物館じゃない!」。そこで、今回止めた1基と過去に止めた2基の合計3基の原発の再稼働を申請するという。