リクルーターが放った衝撃の一言
【塩田】ところが、その直後、「だって無期(懲役)だぞ。80万円のために無期なんてやってられない」と言った。この期に及んで、まだコスパで物事を捉えているのかと衝撃を受けました。
さらに驚いたことに、彼は「タタキは割に合わないと思うなら、覚醒剤の案件がある」と持ちかけてきました。私がのちに記者であることを明かして「良心の呵責はないのか」と質問すると、「悪いことしている人にそんなことを聞くのは愚問ですよ」と返ってきました。自己正当化なのか防衛機制なのか、犯罪を続けるために何らかの心理的作用が働いていると感じました。
【宮台】意識とは「反応に対する反応」です。何かをしているだけでは動物と同じで意識がなく、何かをしている自分に「これでいい」「なんか嫌だ」と反応している時に意識があります。タタキの現場ではリクルーターが情報を制限して実行犯に意識する間を与えないから躊躇がない。他方、リクルーターは意識がある。「愚問です」と答えたのは、葛藤や躊躇した時期を一度通過して、ある種免疫化したうえで出てくるセリフでしょう。
(構成=村上敬)