その他、商社など業種によってTOEICの一定の点数をクリアしているとか、経理部門なら簿記の資格を持っているなど語学力や公的資格を前提要件にしている企業もある。テルモの昇格試験は論文と面接が中心。最も重視しているのは面接であり、当該部門の役員と人事部長の4人が面接を担当し、面接のポイントは「ずばり会社を変えられるかの一点。どんなにこつこつ真面目にやっていても期待できない人はだめ」(同社人事担当者)である。
同様に役員面接を実施している大手IT系企業の面接のポイントは「過去にとらわれない創造性」だ。同社の人事部長は「これだけ世の中の変化が激しい時代では逆に過去の経験がじゃまをすることがある。過去の成功体験や知識・スキルが役に立たない場合もあり、過去に縛られない発想など、自分の思いが語れるかどうかを面接で見る」と指摘する。
また、昇進試験のできさえすばらしければ課長になれるわけではない。二宮氏は係長時代の行動も加味されると指摘する。
「たとえば係長であっても1つ上の営業所長代理の仕事を任せて、やっていけるかどうかの適性を見ることもしている。間違って昇進させることは避けたいし、少しハードルの高い業務に就かせることで管理者としての能力を見極めるようにしている企業も多い」
いわば“お試し期間”であるが、あるいは海外駐在員として派遣し、現地でのビジネスや従業員の管理などの仕事ぶりが昇進にも反映されることになる。とくに大手企業では次世代リーダーの早期発掘と育成を目的に、有望な社員を選出し、教育と経営職としての実践を組織的に実施しているところもある。たとえば日産自動車では日本、欧州など地域ごとにビジネスリーダー候補(ハイポテンシャル・パーソン)として登録し、育成のための配置と特別なトレーニングを行っている。
近年は人事制度の変更により、たとえ課長に昇進しても、その任にあらずと判断されれば降格することもある。あるいは課長止まりで会社人生を終える人もいる。逆に出生コースをすいすいと泳いでいく人もいる。そうした社員に共通する資質とは何か。