もしトップアイドルを目指す男子中学生がデビューするなら
アイドルとしての成功を志す男子中学生がいるとしよう。彼は、業界最大手の芸能プロダクションに所属している。
このとき、所属プロダクションの社長による性的虐待を我慢すれば、デビューできる可能性が高まる。しかし、それを拒否して退所すれば圧力や忖度によって一生日本の芸能界では活躍できないリスクがある。
とどまるも地獄、離れるも地獄──若者は二重に支配されている。芸能プロダクション内における支配と、芸能界(業界)における支配だ。
ジャニーズ事務所は、こうした手法で若者たちを支配してきた可能性がある。それが人権上きわめて大きな問題であることは、だれでも理解できるだろう。
ジャニー喜多川氏のセクハラ行為は既に裁判で認定済み
現在、故・ジャニー喜多川氏の性的虐待問題が再燃している。ジャニーズJr.の未成年男性に対して、創業者が長年にわたって性的虐待を続けていた疑惑だ。
そのきっかけは、3月に放送されたイギリスの公共放送・BBCがドキュメンタリー番組『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』だ(現在、Amazonプライムで観ることができる)。そこでは15歳のときに性的虐待を受けた男性・ハヤシ氏(仮名)が、声をつまらせながら証言をしている。
ジャニー氏の性的虐待は、1960年代からときおり報じられていた。1980年代以降は、当事者である北公次氏(元フォーリーブス)や中谷良氏(元ジャニーズ)などの告発もあったが、それが一般に広く伝わることとなったのは、1999年の『週刊文春』の報道だ。
だが、ジャニー喜多川氏とジャニーズ事務所は『週刊文春』を名誉毀損で訴えた。この民事裁判は一審と二審でその判断が分かれたが、2004年にジャニー氏の性的虐待(裁判では「セクハラ」とされている)が事実認定されて結審した。具体的には、「ジャニー氏が、少年らが逆らえばステージの立ち位置が悪くなったり、デビューできなくなるという抗拒不能な状態にあるのに乗じ、セクハラ行為をしている」との記述が事実とされた(『文春オンライン』2023年3月18日)。
つまり、ジャニーズ事務所の社長がデビューや報酬と引き換えに、未成年者に対して性的虐待を加えていたことが明らかとなった。