「すごく気持ちがよくなって、シャキッとなりました」
昨年暮れにメディアドゥの東京本社に現れた彼女に感想を聞く機会を得られた。
「キックボクシングに出会えたそうですね?」
「一時期体調を悪くしていたときに始めました。今ではやる気満々です」
確かに彼女は活力に満ち溢れていた。笑顔を絶やさないし、背筋をピンと伸ばしてはきはきと話をする。とても84歳とは思えなかった。
「最初は嫌だと言ったんですけれども、やってみたらものすごく気持ちが良くなって、シャキッとなりました」
今では東京に行くたびに小比類巻道場へ足を運び、汗を流しているという。
キックボクシングは高齢者にこそお勧め
小比類巻によれば、キックボクシングは高齢者にこそお勧めのスポーツだ。例えば「クロス運動」。左手で相手の左手にミット打ち、次に右手で相手の右手にミット打ち、最後に右足で膝蹴りをする。常に頭を使って動かなければならず、認知症防止を期待できるという。
確かに、多くのフィットネスジムは「ボディコンバット」と呼ばれる格闘技系プログラムを取り入れている。そこにはテコンドーやムエタイ、空手などと共にキックボクシングも含まれており、高齢者が参加するケースも珍しくなくなっている。
ちなみに、レジェンドにとって82歳の会員を指導するのは初めてだった。「それまで会員の最高齢は65歳、実家の青森でたまにミット打ちをする僕の母親を含めれば74歳。藤田さんのお母さんは断トツで最高齢です」
母親が楽しそうに体を動かす姿を見て、藤田は小比類巻に提案した。「道場の木頭支部を立ち上げましょう。僕が全面支援しますから」
その後、とんとん拍子で話が進み、2022年4月には小比類巻道場木頭支部の上棟式が開催された。藤田が代表を務めるKDHグループが施設全体の運営を担い、小比類巻道場門下生の平川雅大が道場長兼トレーナーとして指導に当たる。
小比類巻自身もオンライン講習を行うほか、毎月1回は木頭支部に足を運んで自ら指導する考えだ。