生で卵を食べられることに衝撃を受ける人は多い

足許では、ウィズコロナに伴う国内外の動線修復の加速も手伝い、わが国を訪問するアジアや欧米の観光客も増えている。食文化などわが国の魅力を発見、あるいは再認識する人は多い。特に、“すき焼き”や“卵かけご飯”など、生で卵を食べられることに衝撃を受ける人は多いようだ。

すき焼きを生卵にくぐらせて
写真=iStock.com/kuppa_rock
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さらに、空輸によって鮮度を保ちつつ迅速な輸送が可能になったことは、日本産の卵の高付加価値化を促進する大きな要因になった。そうした変化を背景に、シンガポールの消費者にとってわが国の卵は“安心”、“安全”、“高栄養”、“美味”な高級食材としての地位を確立しつつあるといえる。

わが国の養鶏業者が飼料の配合を改良するなどして、見た目も、味も、より満足度の高い卵の供給に取り組む養鶏業者の努力の積み重ねが大きいことは言うまでもない。

日本の“ブランド農産品”の需要は増えている

また、台湾でも、鳥インフルの流行によって卵不足は深刻化している。一方、わが国では飼料のさらなる見直しなどを進めて、卵の高付加価値化に取り組む養鶏業者も出始めた。そうした事例が示唆するのは、わが国農業の潜在的な成長可能性の高さだ。世界から高級品として扱われるわが国の農畜産物は増えてきた。代表例は、“和牛”、“シャインマスカット”、“スカイベリー”や“とちおとめ”などのイチゴだ。

国内では少子化、高齢化、地方における過疎の深刻化などを背景に、需要は高まりづらい。過疎化によって耕作が放棄される農地も増えている。養鶏をはじめ、農畜産業の成長は難しいとの見方は多い。

しかし、世界経済の観点から考えると、わが国の農業技術の競争力は相応に高い。それに磨きをかけることによって、卵のように海外で高級品としての評価を獲得し、より多くの付加価値を生み出すことは可能だ。

参考になるのはオランダだ。わが国同様、オランダの国土は狭い。しかし、輸出競争力は世界トップクラスにある。国連によると農産物、食料品の輸出額においてオランダは米国に次ぐ世界第2位だ。