こだわったのは圧倒的なはき心地の良さ
――開発にあたってセクシーさは大事にされましたか。
【溝口】いえ、それはありません。いまの世の中は価値観が多様化しています。「何がセクシーか」「何がカッコいいか」を決めるのはお客さまなので、こちらから押し付けることは考えませんでした。
洋服もそうだと思いますが、ほかの人からどう思われるかはともかく、いいものを身に着けていたら、なんだか気分がいいですよね。実は弊社には「ふんどしNEXT」という商品があるんです。「ふんどしを締めなおす」という言葉があるように、肌にいちばん近いところに着けるものによって、心持ちすら変わってくる。逆にはき心地の悪いものを身に着けていると、一日中気持ちが悪いですよね。
ですからレースボクサーに関しても、いちばんこだわったのはデザインではなく、素材、設計、縫製、品質です。我々は男性社員も女性社員も日常的にレースに接しているので見慣れているわけですが、一般男性には、レースといえば「ガサガサしていそう」「破れやすそう」「透けそう」「はずかしいんじゃないか」というイメージがあります。
それを一つひとつ払拭するために、何度も修正を繰り返して調整しました。たとえば男性は下着をはくときに引き上げる力が強いので、レースでも強度を重視しましたし、わざと社内の肌の弱い人にはいてもらったりしました。レースを使いながらも、はき心地の良いものに仕上げたのが肝だと思っています。実際、社内で試着したときははき心地の良さに感動しました。これは高い評価を受けるはずだと確信したのです。
「イロモノ」と捉えられてはいけない
――はき心地は実際にはいてみないとわかりませんよね。はき心地の良さを伝えるためにどんな工夫をされましたか。
【溝口】店頭やウェブストアで売る前にテストマーケティングをしまして、その時きちんと商品の良さを表現して伝えたうえで、お客さまの声や評価を収集しました。あとは弊社がいままでまじめに商品づくりに取り組んできた企業姿勢がプラスに働いたのかなと思います。
お客さまとのコミュニケーションに関しては、いかに「イロモノ」として捉えられないようにするかがポイントでした。社内の一部では、「バズらせれば売れるだろう」という意見もありました。確かに、それは一瞬の売り上げにはつながるでしょう。でも私たちはこの商品を長く定番として売っていきたい。そのために広報の中澤(泰子)とも情報共有をして、慎重にコミュニケーションをおこなってきました。