医師から見た母子手帳の改善してほしい点

このようにいいところがたくさんある母子手帳ですが、改善してほしい点はあります。まず、大事なことがたくさん載っているのに読みにくいことです。もう少し読みやすくなるようなレイアウトや記載をしてほしいと思います。

また、お母さんのための部分では、妊娠中に気をつけてほしいアルコールなどの飲み物、生ものなどの食べ物、過ごし方、何があるかわからない妊娠中の旅行「マタ旅」はよくないことなどが簡潔にわかりやすく書いてあるといいですね。逆に、以前は控えるように言われていた温泉の入浴は特に禁止事項ではないことなども書いておくといいと思います。

子供のための部分では、離乳食のページに厚労省のサイトにあるようなアレルギーの話を入れてほしいし、ワクチンは受ける順に記載できるようにしてほしいです。感染症のような症状が出た際に、診療を受ける上で予防接種歴がとても大事ですが、今のままでは医療者にとっては確認しづらく、保護者にとっては受け忘れを見つけにくいというデメリットがあります。数年ごとに新しいワクチンが出てきたり、任意接種だったものが定期接種になったりするので、なおのこと見づらいのです。私は外国で生まれた子を診療することもありますが、予防接種の記録の最初が定期接種、次に任意接種となっている国は日本だけです。

母親の指を握る赤ちゃん
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

疑問や不安があるときは専門家に質問を

昨年、日本の年間出生数は、とうとう80万人を下回ってしまいました。ずいぶん前から少子化が進んでいたため、近所で子守りを頼まれたり、親戚の子と一緒に遊んだりする機会も減り、初めて接する子供が我が子という人も少なくないでしょう。すると、初めての育児でより疑問が多くなったり、心配になったりすることがあるかもしれません。

私のツイッターアカウントでは、ずいぶん前のツイートや記事が「いいね」されたり、「RT」されたりすることがあります。すると「また育児や小児医療に関する疑問や不安、デマや都市伝説が再燃して、誰かがツイッター内検索をしたのだろう」ということがわかります。特に母子手帳、そしてK2シロップとワクチンについては、もう何度となく「こんな不自然なものを子供の体に入れてはいけない」「自然が一番。母子手帳などは使わずに本来の育児に立ち返ろう」という事実とはまったく異なる説が現れては消えています。

もしも子育てや医療に関して疑問や不安を感じたら、インターネットで広く調べるのではなく、まずは公的機関や学会等のサイトを見てみましょう。それでも疑問や不安のある場合は、ぜひ専門家のいる子育て支援センターや保健所、小児科などで質問してみてくださいね。きっと正確な知識が得られると思います。

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