おかしな言葉を使う「宮内庁関係者」

だが、「宮内庁関係者」の発言の中にはおかしな言葉遣いが混じっている。宮内庁の職員であれば、かつて皇族の身分におられ、婚姻その他の理由で皇籍を離れられた方については、旧宮家の国民男性(皇籍離脱が昭和22年[1947年]なので年齢は70歳代後半以上)を含めて「元皇族」と表現する。その上で、元皇族とその子孫を厳格に区別する。

これに対して、先の発言に出てくる「旧皇族」という言葉は近頃、特殊な用語になっている。皇位継承資格の「男系男子」限定という、一夫一婦制の下では持続困難なルールを今後も頑なに維持しようとする人たちが、旧宮家の(1分1秒も皇族だったことがない、もとから国民として生まれた)子孫も含めて、拡大解釈的に「旧皇族」と呼んでいるのだ。これは、平等であるべき国民の中にも特別な身分(準皇族的な立場)を認めるかのような、皇室との国民の区別を曖昧にする悪質な用語法と言える。先の発言でも、賀陽家の次男という親の代からすでに国民である人物を、「旧皇族」と表現している。

よって、この記事に出てくる「宮内庁関係者」は、おそらく宮内庁の正式な職員ではない。そうした不正確な言葉の使い方に無頓着な(または好んでそのような言葉を用いたがる)、ある種の傾向を持った人物と推測できる。

怪しい「宮内庁関係者」

②と同じ日に発売された③の中にも、「宮内庁関係者」の発言が載っている。いわく、「政府は、すでに意思確認のため賀陽家とコンタクトをとっており、(国民の立場を離れて皇籍を取得することに)好感触を得ているといいます」と。

さらに「(賀陽兄弟の父親の)正憲氏ご自身も『自分の家が皇室に復帰する可能性があることを肝に銘じて過ごしてきた』などと周囲に漏らしているのです」という踏み込んだ言い方までしている。

ここまで踏み込んだ言い方をする宮内庁職員がいるとは、にわかに考えにくい。おそらく②と同じケースだろう。

発言内容の食い違い

さらに重要なのは、ここで「宮内庁関係者」の伝聞によって紹介されている賀陽正憲氏の発言内容が、以前、同氏が直接、取材に答えた時の内容と大きく食い違っている事実だ。過去の『週刊新潮』(平成23年[2011年]12月15日号)には、同氏の発言が以下のように紹介されていた。

「賀陽家は、皇女をお迎えしておらず、また、既に(元皇族だった)当主なく、私も菊栄親睦会(皇室の方々と元皇族などご親族一統の親睦会。平成26年[2014年]5月18日以来、すでに10年近く開催されていない)のメンバーではありません。(敬宮殿下との)縁談などとは、立場が違いすぎ、恐れ多いことです。
息子たちはPSP(プレイステーションポータブル)で遊ぶ、普通の男の子です。皇室様へのお婿入りなど考えること自体、失礼だと思います」

上野駅構内の本屋さん
写真=iStock.com/TkKurikawa
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