ロシア人がビザなしで入国できる数少ない国

ロシアの妊婦たちが母国を棄て、南半球への大移動を始めた。

米ワシントン・ポスト紙は、過去14カ月間で2万2200人以上のロシア人が南米・アルゼンチンに入国し、その多くが妊婦とみられると報じている。夫婦で移住することも多いようだ。

空港で入国審査手続きを待つ列
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モスクワからアルゼンチンまで直線距離で1万3000キロ超。地球を3分の1周する大移動となる。侵攻後に直行便が停止されたため、中東やアフリカなどを経由し、丸1日以上をかけた長旅となっている。

妊婦やその夫たちは、なぜアルゼンチンを目指すのだろうか。もちろん理由の一つには、アルゼンチンにビザなしで入国できる点があろう。経済制裁の下のロシアでは、生活に一定程度の不便が生じており、脱出の動機は強い。若い夫にとっては、徴兵の危険も無視できない。

だが、夫婦たちがロシア脱出を図る動機は、それだけではない。移民に寛容なアルゼンチンの制度を利用しようとする思惑があるようだ。

「出生数の3分の1がロシア人」という病院も

昨年来、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスの街角で、妊婦たちの姿が目立つようになった。ブルームバーグは、現在南半球の夏の終わりを迎えている現地から、ある公園での光景をリポートしている。

「ブエノスアイレスの中心部に近い、緑豊かなラス・エラス公園。晩夏の暑さのなか、若い母親たちがバギーを押し、地元の人々は日陰でマテ茶を飲み、喉を潤している」

南米の郊外ではよく見られる光景だが、一昨年までは見られなかった異変が起きていると同記事は指摘する。「母親たちはみな、ロシア語を話しているのだ」

彼女たちは地元の母親ではなく、子供を産みにアルゼンチンに渡ったロシア人たちだ。記事によると、プーチン大統領が侵攻に及び、徴兵と経済不安が国民に及ぶようになって以来、ロシアの妊婦たちは「大挙して」アルゼンチンを訪れているという。

ワシントン・ポスト紙は、「ブエノスアイレスの人々は、街中で聞かれるロシア語にも慣れてきた」ほどだと報じている。現地紙によると、ロシア人に特に人気の高いブエノスアイレスの2つの病院では、出産数のほぼ3分の1をロシア人が占めるようになったという。

また、外国人観光客に人気のパレルモ地区では、ベビーカーを押したりベビー服を買ったりするロシア人の母親たちの姿が多く見られるようだ。