中小企業の半数が制度に対応できていない

また、従業員1000人以上の大企業は男性育休取得率の公表が義務化されたことで取得率は向上するかもしれない。しかし取得率を向上させるには、働く人の7割を占める中小企業の動向だろう。

日本商工会議所・東京商工会議所が昨年の9月21日、「産後パパ育休」制度の対応について調査している(「女性、外国人材の活躍に関する調査」 2880社)。制度の取り組み状況については「既に完了している(社内規定の整備、従業員への周知・啓発等)」企業が26.0%、「まだ対応は完了していないが、目途はついている」が23.1%。計49.1%が「対応済・目途がついている」と回答。一方、「改正の内容は把握しているが、対応できていない」(37.0%)、「改正の内容も把握していない」(12.0%)が、約半数だった。

ノートパソコンの上に、育児休業申請書とペン
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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育休取得率は「変わらない」と考える人が4割

制度の対応は義務なので、当時より対応している企業は増えていると思うが、実際に男性育休の取得者が増えるかどうかはわからない。同調査では育休取得が「大幅に増える」と回答した企業は2.2%。「若干は増える」が36.4%。「変わらない」が40.1%で、増えると回答した企業を上回っている。

「変わらない」と回答した企業は男性育休取得を促進したいのかよくわからない。中小企業の場合は経営者の意向が大きく影響する。男性育休取得を積極的に推進する経営者であれば、取得も進むが、その逆であれば取得率も少なくなるだろう。

実際の経営者の本音はどうなのか。複数の中堅企業の人事アドバイザーを務め、中小企業の事情にも詳しいティーブリッジェズカンパニー代表取締役の髙橋実氏はこう語る。

「数年前は『そもそも男性育休なんてあり得ない』という雰囲気があったが、政府の積極的な法整備と、ジェンダーレスの動きが浸透してきたことで、経営者には以前よりアレルギーはなくなっている。しかし、それでも仕事を長期に離脱することに対する抵抗感は相変わらず根強いものがある。男性育休は否定しないものの『今やっている仕事や役割をきちんと全うすることが何より大事だ』という考えの経営者が圧倒的に多い。会社の仕事の状況を考えないで育休取得を申請しても、認めようとしない経営者が少なくないのが現状だ」