「平和ボケ」は記者クラブの“副作用”

「岸田首相なんて襲ってもなんの得もないだろ」という意見もあろうが、西側諸国が牛耳っている今の世界秩序をひっくり返したいと考えるようなテロ組織からすれば、日本や岸田首相に恨みはなくても「見せしめ」で襲撃される恐れもゼロではない。

また、スパイ防止法などが整備されていない日本は、各国の諜報員やその協力者が山ほど入ってきて、自由にのびのびと情報収集をしていると言われているが、今回のことであらためて「日本の機密管理はザル」だと世界に発信してしまった。

では、なぜこんなにも日本は「平和ボケ」なのか。

いろいろな意見があるだろうが、筆者は日本人の意識がどうこうという話ではなく、世界的にも珍しい「記者クラブ」という日本だけのガラパゴス的な国家情報統制の“副作用”だと思っている。

一体どういうことか、順を追って説明しよう。

なぜ国家の内部情報が簡単に漏洩するのか

本来、官僚は国家に忠誠を誓うので、内部情報を外部に漏らすことはしてはいけないと徹底的に教育されるし、それに逆らったら厳罰を下される。例えば、アメリカでバイデン大統領のウクライナ極秘訪問を、マスコミにリークしたような官僚は国家反逆罪に問われるだろう。

しかし、日本の場合は違う。マスコミが首相の「極秘行動」を事前に察知していたことからもわかるように、官僚はいともたやすく情報を漏洩する。それどころか、情報漏洩が“官僚のたしなみ”のような風潮さえある。

わかりやすいのが今、国会でわちゃわちゃやっている放送法文書問題だ。

中央合同庁舎第2号館
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一般の法治国家だったら、放送法の解釈を歪めたとかなんだという話の前に、「誰が行政文書を外部に漏洩させたのか」とマスコミも大騒ぎで、警察の捜査も始まる案件だが、日本のマスコミは驚くほどそこは問題にしない。

なぜかというと、そこに目くじらを立てると自分たちのビジネスモデルがガラガラと音を立てて崩壊をしてしまうからだ。それは端的に言ってしまうと、「記者クラブ」というムラ社会で横並びの取材合戦をしながら、できるだけ早く官僚から「情報漏洩」をもぎ取ってくるというビジネスモデルだ。