自分の「リーク」なしでは何も書けない

だから、官僚たちは好んで「リーク」をする。怪文書も好きだ。まだネットやSNSがそこまで普及していない時、筆者も官僚が作成した「××が不正をしている」「××が不倫をしている」という怪文書を何枚も受け取った。

また、霞が関官僚の多くはよく無意識に「マスコミに書かせる」という言い方をする。自分たちが「リーク」でネタを与えなければ、記者クラブの記者は何も書けない存在であることを知っているからだ。この言葉通り、親しい記者に意図的に内部情報をリークして、政府や自分の役所にとってプラスになるような記事を仕掛ける「マスコミ操作」がクセになっているような高級官僚も少なくない。

そんな官僚の傲慢さがよく表れたのが、財務省の事務次官が、テレビ朝日の女性記者と会食中、「胸触っていい」「抱きしめていい」などの言葉を執拗しつように投げかけたセクハラ騒動だ。

この女性記者は事務次官から電話があって呼び出されると深夜のバーでも駆けつけた。当然だ。事務次官から気に入られれば、他社にはない「リーク」が得られるかもしれないからだ。また、事務次官側も、自分と記者が元請けと下請けくらいの上下関係があるとわかっているので、深夜に呼び出してセクハラをすることができた。

ぶら下がり取材
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官僚とクラブ記者の癒着関係を解消する方法

このような「リーク」を前提とした官僚と記者の癒着関係を日本に定着させてきたのが、他でもない「記者クラブ」だ。閉鎖的なムラ社会の中で競争をしている以上、記者は「ムラの有力者」である官僚には逆らえない。自分のところだけが「リーク」のおこぼれをいただけないという「村八分」に遭うかもしれないからだ。

先ほどの財務省のケースでいえば、もし事務次官からの飲みに誘いを女性記者が断ったり、セクハラ被害を訴えたりすれば、「テレ朝の女性記者はダメだな」なんて悪評がムラの中ですぐに広まってしまうだけではなく、報復として「テレ朝の記者にはネタをやらない」なんて嫌がらせを受けるかもしれない。

記者クラブをオープンにして、海外のようにある程度の取材実績のあるジャーナリストなら誰でも加盟できるようにすれば、こういうパワハラ的な構造はかなり解消される。当然だ。記者クラブに『週刊文春』や『週刊新潮』の記者がいれば、深夜にテレ朝の女性記者を呼びつけてセクハラをしようなんて考えすら浮かばないだろう。

こういう官僚とクラブ記者のウエットな癒着関係が解消されていけば、官僚による「情報漏洩」も減っていくだろう。