「政府の財源」は「政府の需要」から生まれる

考えてみてください。

政府が徴税によって国民から取り上げるのは、貨幣です。

しかし、政府には中央銀行という特殊な機関があって、その中央銀行が、政府の需要に応じて、新たに貨幣を創造し、供給してくれるのです。それなのに、どうして、政府はその貨幣を国民から徴収しなければならないのでしょうか。

むしろ、政府は、財政支出によって貨幣を供給したから、国民は貨幣を保有できるのであり、政府は徴税を行なうことができるのです。

④政府の財源(=中央銀行による貨幣創造)=政府の需要

民間銀行が貸出し(貨幣の創造)を行なうには、企業の需要がなければなりませんでした。ですから、「企業の財源」=「企業の需要」だと言ったわけです。

これは、政府部門も同じです。

中央銀行が貸出し(貨幣の創造)を行なうには、政府の公共需要がなければなりません。

政府の需要が中央銀行を通じて貨幣を創造し、その貨幣が政府の事業の財源となるわけです。

したがって、「政府の財源」=「政府の需要」だということになるのです。

「政府の財源」は「政府の需要」だと言われて奇異に感じるとしたら、それは、資本主義における信用創造機能の仕組みを理解していないからにすぎません。

民間経済を貧しくする「財政健全化」

⑤政府の徴税と返済が、貨幣を消滅する=財政健全化とは、貨幣の破壊である

企業が収入を得ると、貨幣は経済の中から回収され、企業が回収した貨幣をもって銀行に債務の返済を行なうと、貨幣は破壊され、消滅します。

これと同じように、政府が徴税を行なって税収を得ると、貨幣は民間経済の中から引き上げられます。つまり、その分、民間経済は貨幣を失って貧しくなります。

そして、徴税によって回収された貨幣が、中央銀行への政府債務の返済に充てられると、貨幣は破壊され、消滅します。

だとすると、税とは、政府支出の財源を確保するための手段ではなく、その反対に、政府支出の財源(貨幣)を消滅させるための手段だということになります。

別の言い方をすると、財政支出を抑制し、税収を増やし、政府債務を減らすことは、「財政健全化」と言われていますが、この財政健全化によって、貨幣は破壊されていくのです。