デフレ悪化は資本主義の崩壊を招く

⑥すべての企業と政府が債務を完済すると、この世から貨幣が消えてしまう

返済は貨幣の破壊を意味するので、すべての企業と政府が債務を完済すると、すべての貨幣が破壊されてしまいます。

そして、デフレになると、銀行は貸出し(貨幣の創造)ができず、企業は返済(貨幣の破壊)に走らざるを得ないので、貨幣がこの世から消えていってしまうおそれがあります。

そういうデフレの時に、政府までもが財政支出を抑制し、政府債務の削減に努めたら、つまり財政健全化を推し進めたら、どうなるでしょうか。言うまでもなく、貨幣がさらに消えて、デフレが悪化します。最終的には、貨幣がこの世から消滅し、資本主義は崩壊することでしょう。

これを絵で表現したのが、図表4です。

デフレ不況で民間部門の蛇口から水が出ていない時に、政府部門までもが蛇口を閉めて水の流入量を減らしたり(歳出抑制)、排水量を増やしたり(増税)したら、水槽の水が減っていくばかりになるでしょう。

今、財政赤字が拡大するのはむしろ良いこと

したがって、デフレの時に、財政赤字が拡大し、政府債務が増大するのは、何ら悪いことではありません。むしろ、良いことです。つまり、図表5のように、政府支出という蛇口を大きくゆるめて、水槽の水の量を増やしていくのです。そうでなければ、貨幣が消えていってしまい、恐慌(大デフレ不況)になってしまうからです。

財政赤字というと、悪いことのように言われますが、政府が債務を負って支出を増やすことは、単に、貨幣を創造し、供給しているにすぎません。「財政赤字を減らすべし」と主張するのは、「貨幣を破壊すべし」と言っているだけのことです。

要するに、資本主義の仕組みを理解していないから、財政赤字は減らすべきものだという誤解をしてしまうのです。