大英博物館に所蔵されている「世界中のお宝」はだれのものか
欧米には、16世紀以降に世界各地から集められた文化財が数多く存在する。欧米側は、保管環境の整った欧米の博物館・美術館での保管が文化財にとっては望ましいとして返還請求を拒み続けてきた。
しかし、エジプトには中央官庁のひとつに考古省が存在し、考古学上の研究と文化財の扱いに大いなる実績がある。また、ニューヨーク・タイムズ紙がナイジェリアでの美術館の新規建設を報じるなど、アフリカでの受け入れ状況も徐々に整備されているようだ。この点を踏まえると、欧米側の従前の主張を今後も繰り返すことは無理があるだろう。
これまでロゼッタストーンなどの文化財の返還運動は繰り返されてきたが、欧米側はまともに取り合ってこなかった。もとあった国に返された例はまれだ。
流出した経緯は様々だ。文化財を守るための移転もあっただろう。しかし少なくとも「略奪された文化財」と判明しているものについては、もとあった国の所有権を認め、返還の要請に応えるべきではないか。そのうえで一部は、「所有国」との合意のうえで大英博物館などが借り物として展示する形が現実的な解決策となろう。
世界の貴重なコレクションを大英博物館の1カ所で楽しむ時代は、徐々に終焉へ向かっているようにも思われる。各国の博物館を訪れ、その土地に残る現在の風土とともに鑑賞するというスタイルが、国際時代の文化財鑑賞のあり方となるかもしれない。