「WBCと高校野球は別物」
ワールドカップでサッカーブームが来て以来、JFA(日本サッカー協会)には大きな収益が入ってきた。日本のサッカー界は一枚岩なので、この収益の一部は青少年世代のサッカー普及活動にも使われている。プロサッカー選手が世界大会で活躍して得た収益の一部は高校生以下のサッカー選手のためにも使われているのだ。
しかしWBCの収益は、MLB、MLB選手会、NPBなどに入るが、日本のアマチュア球界がその恩恵に浴することはない。組織が違うし、連携もほとんどないからだ。
2006年の第1回WBCで日本が世界一になると、スポーツ少年団の男子軟式野球団員数は2005年の15万7858人から16万4798人と急増、2007年には17万548人になった。
今回のWBCの日本の大活躍によって、今は10万7033人まで減っているこの数字も、大きく跳ね上がることが予想される。
しかし、高野連など日本のアマ球界は、そのブームを今後の裾野の拡大につなげる方策を持っていない。それどころか「WBCと高校野球は別物、関係ない」というメッセージさえ発信しているのだ。セクショナリズムの溝は深い。
野球離れの責任を痛感せよ
高校生以下の球児の「夢」は、ずいぶん前から「甲子園」ではなく「世界」になっている。WBCは、今の球児たちの「夢」へ向けた開いた窓から見える「青空」のようなものだ。
選抜大会の選手宣誓で選手代表が
「WBCで活躍する先輩の皆さん、世界一奪還へ頑張ってください。僕たちも甲子園で精いっぱい頑張り、世界を目指して羽ばたきます」と、言っていたなら、コロナ明けの甲子園は、さらに華やいだはずだ。
要するに今の「野球離れ」の責任の大半は、球児ではなく大人にある。既存の価値観に固執する大人たちは、本当に残念で仕方がない。