誤った思い込みをなくすにはどうすればいいか。脳科学者の西剛志さんは「『歳をとると記憶力が落ちる』と思いこむと、本当に記憶力が落ちてしまうことがわかっている。そうした心理状況から解放されるためには、『いま思っていることは、100%絶対に本当なのか』と自身に問いかけるといい」という――。

※本稿は、西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

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1つミスしただけで「もう全部ダメだ」と思ってしまう理由

わたしたちは、たった1つのミスによって「もうおしまいだ。やっていられない」と努力してきたことをすべて投げ出してしまう極端な反応を見せてしまうことがあります。

・若手社員が、上司のちょっとした注意で、翌日から職場に顔を見せなくなる
・夜中にスイーツを食べた自分を許せず「もうダメだ!」とヤケ食いする
・プレゼンの当日、機材トラブルでパソコンが使えず、やる気を一気に失ってしまう

こうしたときに働いているのは「全か無かの思考(All-or-nothing thinking)」、別名「スプリッティング(Splitting)」と言われる認知の歪みです(※1)。基本的に「全か無かの思考」は精神的に未熟な10代、20代の時期に強く働きがちな認知バイアスとされています。

ものごとをさまざまな角度から見て考える力が育っていないため、「あの人は好き、この人は嫌い。あの人は味方、この人は敵」という図式で対人関係をとらえてしまったり、「世の中お金がすべて」「ものごとには勝ち負けしかない」と社会を切りとってしまったり、極端な思考になりがちなのです。

ただし、多くの人は人生経験を重ねるうち、柔軟な考え方ができるようになって、「全か無かの思考」の働きがやわらいでいきます。