患者に嫌な思いをさせて気がつかないというのは、観察力がないとも言えます。患者は顧客でもありますから、お金を払ってまで嫌な思いをする必要はありません。病院は、具合が悪いから行く場所です。真剣に病状を聞いてくれて、気持ちよく話せる医師のほうがいいに決まっています。
病院との相性は、待合室に入った瞬間にもわかるものです。待っている患者さんが明るかったら、医師が患者さんとちゃんと向き合っているということです。心理的なケアもしっかりできているから、患者さんが明るいのでしょう。
反対に、患者さんがどんよりと暗かったら、医師が血圧や血糖値を下げる薬を「正常値信仰」で出しているということです。だから、患者さんがヘロヘロになっている。こういう病院は避けたほうがいい。病院の待合室に入ったときに感じる、あなたの直感を信じていいのではないでしょうか。
健康診断が長生きを邪魔している
毎年1回、会社の健康診断を受けていた人が多いと思います。受けないとやいのやいのと催促される。退職しても、その慣習が体に残っていますから、年中行事のように、年に1回は健康診断を受けている人もいるでしょう。
ここに、不可解な数字があります。日本人の平均寿命が統計上初めて50歳を超えたのは、1947(昭和22)年でした。そのころの男女の平均寿命の差は4歳ほどでしたが、今は6歳に広がっています。
なぜ女性の平均寿命が大きく延びたのと同じだけ、男性はそれほど延びなかったのでしょうか。変だと思いませんか?
原因のひとつに「健康診断」があると私は思っています。法律で事業者に義務化されましたから、会社に勤務する人は、強制的に健康診断を受けていました。一昔前まで健康診断を受けていたのは、圧倒的に男性が多かった。その当時、女性は専業主婦になるのが一般的でした。働くとしてもパートタイマーなので健康診断は受けません。
もし健康診断が長生きに役立つなら、男女の寿命は逆転していたはずです。ところが、寿命の年齢差が広がってしまった。健康診断がその要因になっているのではないかと思います。
健康な100人のうち5人は「異常」と判断される
健康診断の結果は、すべて基準値をもとにしています。健康診断の基準値の決め方は1000人、1万人という健康な人を集めて検査します。そして検査数値の平均値を挟んで95%の人を「正常」とし、そこから高すぎたり、低すぎたりして外れた5%を「異常」とした統計値です。つまり最大で、健康な100人のうち5人が「異常」となるわけです。
しかし、もともと健康な人を集めた検査です。「異常」でも病気ではありません。しかも、基準値のつくり方を見てわかるとおり、年齢を無視してつくられています。健康診断の数値に一喜一憂するのは、バカらしいと思いませんか。