ロシア発のマルウエア(悪意のある不正ソフト)、「ノットペトヤ」による壊滅的なサイバー攻撃は、多国籍企業と保険会社の間で大規模な訴訟に発展した。
CHTと保険会社も、ケーブルの切断が偶発的な損害なのか、それとも台湾の弱体化を狙った一国の政府が引き起こした危害なのか、見解をすり合わせなければならない。
さらに、台湾だけでなく世界中の国が直面している問題がもう1つある。海底ケーブルの敷設や修理を行う専用船の不足だ。CHTが早くても4月末までに修理を始められないのは、ケーブル船が世界で60隻しかないからだ。
船不足だけでなく老朽化も進んでいる。通信設備に詳しいDCDマガジンのダン・スウィンホーが報告しているように、04~10年に新しいケーブル船は1隻も引き渡されておらず、11~20年はわずか5隻だった。
「60隻のうち建造から18年未満は8隻だけで大半が20~30年だ。30年以上が19隻、50年以上が1隻ある」
将来的にはより多くのケーブルを海底の下に敷設して損傷しにくくする。しかし、その実現も、60隻のケーブル船が現役を続けられるかどうかに懸かっている。
中国の漁船や貨物船が、台湾と世界を結ぶ15本の海底ケーブルを「うっかり」切断しようとしているのなら、しばらくは魅力的な標的がある。
世界が海底ケーブルに依存していることと、それを整備する船が少ないことを考えれば、海で「事故」を起こそうとする国が出てきても不思議ではない。
海底ケーブルの妨害工作は現代の封鎖になり得る。しかも過去の封鎖とは異なり、ひそかに遂行できる。他国の通信事業者は当然ながら、CHTのバックアップ体制を研究して参考にするだろう。
多くの国が今回の台湾の対応から学んでほしい。壊滅的だが目に見えない封鎖への対応は、西側諸国の政府が直面する最も難しい外交課題の1つになるかもしれない。