不釣り合いに多い事故
国際ケーブル保護委員会によると、ケーブルの損傷事故は世界で年間100~200件あり、そのうち漁船が関係する事故は50~100件。残りは建設工事などによるものだ。つまり、馬祖列島と台湾本島を結ぶケーブルの損傷事故は不釣り合いなほど多い。
しかも、従来の事故は主に、沖合に停泊して海底の砂を採取する中国の掘削船に関連して起きている。海底ケーブルの直径は17~21ミリで庭のホースくらいの太さだ。これを中国の船舶が航行しただけで、立て続けに2本を「偶然」破損させたというなら、信じられないほどの不運が重なったことになる。
中国の掘削船が台湾の海域に停泊して海底の砂を採取することは、典型的なグレーゾーンの攻撃だ。軍事攻撃ではないが、問題がないとはとても言えない。
中国船が現れるたびに台湾の沿岸警備隊が現場に赴き、退去を指示しなければならない(招かれざる客が迅速に退去するとは限らない)。
掘削に伴い海洋生物や海底が傷つけられて、海底ケーブルも頻繁に被害に遭い、馬祖列島の日常生活が損なわれ、台湾本島や世界との通信に支障を来している。
2月上旬の出来事を受けて台湾の与党・民進党は、これほど短期間に連続して破損したとなると、中国が故意にやったのだろうと非難した。今回の件は、台湾本島の通信を遮断する予行演習と捉えることもできる。
社会的コストも膨大に
現在、15本の海底ケーブルが台湾本島と世界の通信網を結んでいる。CHTは少なくとも部分的には、新たなケーブルを1本敷設して馬祖列島の接続を確保する計画で、これは海底の下に埋める。
ただし、工事が終わるのは2025年になる見込みで、それまでは予備システムの費用をCHTが負担する。今回の2本の修理費用は66万~130万ドルに上る。
このようなコストを発生させることも、グレーゾーン攻撃の一部だ。地政学的な侵略行為で企業が損失を被った場合、損害保険が支払われないこともある。