※本稿は、池上彰『聖書がわかれば世界が見える』(SB新書)の一部を再編集したものです。
“離縁してはいけない”フランスで事実婚が多い理由
「マタイによる福音書」には、イエスが離婚を禁じた個所が出てきます。
イエスを信じることができないユダヤ教徒の中のファリサイ派という派の人々が、イエスを試そうとして、「何か理由があれば、夫が妻を離縁することは、律法に適っているでしょうか」と問いかけます。それに対するイエスの回答です。
カトリック教徒が離婚できないというのは、この一節が根拠です。
後のイングランドの王ヘンリー8世は、妻の侍女と結婚したいがために、妻と離婚しようとしますが、カトリックでは離婚できず、当時のローマ教皇も認めません。そこで、自ら英国国教会を創設し、そのトップとなり、妻と離婚したのです。
また、カトリック信者が多いフランスでは、離婚が難しいため、多くの男女は事実婚を選びます。事実婚なら「神の前で結婚を誓った」のではないので、離婚できるからです。
フランスでは事実婚の夫婦から生まれた子どもの比率が、正式に結婚している夫婦から生まれた子どもより高いと言われるのは、これが理由なのです。
「真理はあなたたちを自由にする」
東京の国立国会図書館には、「真理がわれらを自由にする」という言葉が掲げられています。
この言葉は、実は「ヨハネによる福音書」が由来なのです。もちろん国の施設は政教分離ですから、聖書の一節が引用されているわけではありません。
この言葉が欧米社会で広く言われるようになっていることから、真理を探究することの大切さという意味で使われているのでしょう。
国立国会図書館のウェブサイトには、次のように説明されています。
国立国会図書館の使命は、国立国会図書館法に定められています。
使命
「真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される。」
私たちは、学問の場で真理を追究する。真理を知ってこそ、本当の自由を私たちは得ることができるという意味で使われています。「リベラル・アーツ」という言葉に共通する認識ですね。