「悩む力」が足りぬ今のお父さんたち

心にトラブルを抱えた子どもとその母親が求めているのは、「カミナリ親父」とか「友達パパ」といった表面的な父親像ではなく、もっと内面的な、人間の存在の根幹に関わるような部分です。

しかし今、「友達パパ」も「カミナリ親父」も普通のお父さんも、こうした子どもたちの危機にまったく関わろうとしない。これが大きな問題なのです。

現場でお会いするお父さんは、「気合が足りない」などと心の病気そのものを否定する。お金も出さず治療にも行かせず、「おまえがいけない」と妻を責める。子どもは余計怖がって病気が進行する。リストカットなど激しい行動に出て初めて病院に来ますが、連れてくるのは母親です。お父さんは仕事を理由に面接にも来ないし、来ても医者の話を聞きません。お父さんが変わるためには一度、自分がどういう父親かについて悩む必要がありますが、その「悩む」に到達するまでのハードルが非常に高い。

今のお父さんたちは、悩む力や自分を振り返る力がすごく弱いと思います。いい幼稚園、いい学校、いい大学へ通い、それをずっと親が面倒を見て、自宅からそのまま結婚する男性は、いいポジション、いいお金といった目に見えるわかりやすいものを追い求め、おおかた思考が非常にシンプル。世の中ではいろんな見方、考え方を受け容れていかなくてはならない、といった思考のトレーニングをあまりなさっていない感じがします。

奥さんも似た価値観の方になりがちですから、できた子どもは2人して悩まないで育てるというか、なるべく世間に合う価値観の下で学校に行かせようとします。子どもは放っておくと“エイリアン”になりますから、ペット化して一生懸命箱に入れよう、箱に入れようとする。

それに耐えられなくなった子どもが暴れ始めます。いい子でしかいられなかった、自分の感情を出したことがない、生きてる実感がない、でも自分が何を求めているのかわからない……親は「おまえをどれだけ可愛がったか」「どれだけお金をかけたか」と言いますが、子どもの知ったことではないでしょう。

しかし逆説的ですが、思春期に悩まないと、親とは違う自分の人生をつくり上げることができなくなります。一生自分を殺して生きることにもなりかねません。自信をなくして当たり前。悩んで当たり前。お父さんにもいえることですが、悩むということは悩む力、他人のことを考える力を持っていることでもあります。

ですから、悩みと闘う子どもを、上から目線でなく1人の人間としてリスペクトしてあげてください。人が尊敬できるというのは大事なこと。家族で褒めあうだけでなく、互いに尊敬しあうことで、社会でボロボロになったお父さん自身の自尊心も取り戻せるかもしれません。

※すべて雑誌掲載当時

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(プレジデント編集部 西川修一=構成 若杉憲司、小原孝博=撮影)