「最近になって分かったことがあります。あるコンピュータ言語学の専門家たちが、たった2人の男がQアノンについて掲示板に投稿し、それが広まったものだということを突き止めたのです。『ファンタジー・ランド:狂気と幻想のアメリカ500年史』にも書いたとおり、それら真っ赤な?が全国にテレビで放送され、国政のリーダーたちによって繰り返し語られ、普通のこととして正当化されれば大変なことになるでしょう」
アメリカ映画や西部劇に共通する「復讐」の物語
アメリカを代表する映画評論家、ジョナサン・ローゼンバウムはまた別の見方をする。
「クエンティン・タランティーノの人気は『復讐』という概念と密接な関連があります。彼が作る映画は全て復讐という発想をベースに作られているからです。そして、多くのアメリカ映画や西部劇にとって復讐は普遍的な考え方になっています。
通常、復讐は原始的な概念に基づいています。旧約聖書の『目には目を、歯には歯を』という言葉の通り、復讐とはやられた相手にやりかえすというものです。
ですが、アメリカがこの言葉を使用する時は、そうではないのです。非常に原始的で愚かな正義に関する考え方を持ち出してしまう。中東での戦争を見れば分かるように、誰に本当の責任があるかは気にも留めず、ただ誰かに復讐を果たせればそれでよかったかのように」
ヒッピーに投影したものは何か
「アメリカ人は『ハッピーエンドの悲劇』を求めています。今日のように、ハリウッドにおいて10歳の少年の楽しみとワクワク感のために映画が作られている限りにおいては、クエンティン・タランティーノはある意味、理想的な監督なのでしょう。なぜなら彼の映画は大人向けのように扱われていますが、実際は少年向けに作られていると思うからです。映画は単に見ている間だけ気持ちよくなればよく、劇場から出たらすぐ忘れるべきものだというわけです。
私は個人的に、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にはメッセージ性があると感じています。それは、ドナルド・トランプの『Make America Great Again(アメリカ合衆国を再び偉大な国にする)』と同じメッセージです。
映画では実際のヒッピーはこうだったという前提で、頭のおかしいやつに扇動された殺人犯が登場し、これが典型的なモデルだと描かれています。それは実際のヒッピーとは何の関係もありません。でもそれを『カウンターカルチャー』の姿として描いているのです。
アメリカ文化の多くが、自分は非政治的だと言いながら、現状を受け入れているように思えます。そして現状を受け入れるということは結局保守化を促すことになるのです。タランティーノは、私が思いつく中でそれを一番よく具現化した人だと思います」