「仕事を選ぶ嗅覚」を磨く必要性

今度は、「実はフリーランスとして働いてみたら、厄介な仕事だった!」という事例も紹介しましょう。フリーランスとして働くことのメリットの1つは、「いやな仕事は断れる」ことだと述べました。勤めていた時は、いやな仕事でも上司に言われたら断れないけれど、フリーになったら、「これはやらない」と決めることができる。

ただし、始まる前には「いやな仕事」だと見破れないこともあります。そういうときのためにも、フリーランスは、仕事を選ぶ嗅覚を鍛えていく必要があります。

「外部からは見えなかったけれど、実際にやってみたら厄介な案件だった」ケースには、「最初からスケープゴートにする目的で外部人材を使う」場合が隠れています。企業に勤めていると、社内事情の複雑なアレコレ、ありますよね。社内政治や複雑で込み入った事例。誰かが請け負わなくてはならないけれど、社内では誰もやりたがらない。あるいは社内人材が携わると角が立つので、外の人にやってもらおうというような、いわゆる大人の事情案件です。

ビジネスマンの手はテーブルの上に落ちるブロックを停止します。
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スケープゴートとして働くリスク

実は、これは私の体験談です。とある企業は当時、同業他社3社が合併した直後でした。部長、部長代理、部長補佐の3ポジションを、元の3社出身者が持ち回りで任務にあたり、毎週の会議でも常にその3人にお伺いを立て、最大公約数的合意を元に話を進めていかなくてはなりません。運悪くそのうちの1人への事前根回しに失敗すると、目も当てられません。会議は険悪な空気に満ち溢れ、天からの怒号が降ってくる始末。○○派、△△派、××派に分かれる社内メンバーの調整役をひたすらやり続ける毎日に、私は気づけばだいぶメンタルが追い詰められていました。それなりに対価はもらえているけれど、自分のスキルアップには1ミリもなっていない。

そもそもこれは誰のための仕事で、何の価値を生み出しているのだろう……。仕事に意義を見出せず、ついに仕事開始4カ月目で辞めさせてもらいました。おそらく今ならば、もっと上手に継続できていたはずです。

そもそも始める前に、「ああ、こういうタイプの案件か」と気づくこともできたでしょう。その会社の沿革、置かれている状況、ステークホルダーの面々、M&Aでどことどこの会社が一緒になったのか、そして直属の上司となる人がプロパー(生えぬきの人材)なのか“外様”なのか……、それによって立ち回り方がまったく変わってくることを、当時若くて経験値も低かった私は気づけなかったのです。