システムとしてほめる場を設定するのはいい

【西村】人はふだんの生活や仕事の中で、なかなか他人をほめることは難しいと思います。たぶん渡部さんや僕が楽なのは、“ホメ渡部”とか“ほめ達”というキャラクター、役割を担っているから、ほめざるをえない状況に追い込まれていること。「ほめ達!検定」の狙いの一つもそこにあって、認定証(カード)を常に携帯してもらうことにより、ほめなきゃいけない立場に追い込んでいるわけです。

【渡部】ホメ渡部の場合は、番組収録といういわば締め切りがあります。収録日に絶対にほめなければいけないから、その日までに、なにがなんでもほめるポイントを見つける。これまで「ティッシュをほめてくれ」「水をほめてくれ」といった難しいテーマもありましたが、もし「じっくり取り組んでいいよ」と言われたら、いつまでたってもできない可能性はあります。

【西村】そういう意味では、“ほめ”の締め切りをつくるというのはいいかも。

【渡部】たとえば、どんなに嫌な上司や同僚、部下についても、「明日までに、ほめるポイントを○個見つけろ」とシステム化し、そうせざるをえない環境に追い込むわけですね。

いま、僕は若いビジネスマン向けの番組に出演させていただいているのですが、社内でなにがよかったかを確認し合う企業が増えていると実感しています。仕事の最後のミーティングで「今日、誰がよかったか」といった意見を出し合ったり、さらに、みんなからよかったと言われた人に対し、部門長が近所のファミレスのクーポン券をあげたり。和気あいあいとした部分と、システム化された部分のバランスが、すごくいいなと思います。

それがうまく回ると、ミーティングで他人をほめなければいけないから、他人のいい部分に着目するようになる。上司も部下のミスが気になるだけじゃなく「今日はどこを頑張ったか」を見るようになる。

【西村】「人間はそもそも人のことをほめられない」ことを自覚することが大事です。わたしたちは本能で、自分の周りの人の欠点やできていないところを探してしまう。自分の周りの上司や同僚、部下の悪いところ、ダメなところが見えてしまうのは、本能でしみ込んでいるものだから仕方がない。だからこそ、本能よりちょっとだけ自分の理性を生かして、周囲の人のいいところを探そう、あるいはそういう修業だと考えゲーム感覚でスタートすることも大事です。意思を持って、覚悟を決めて、ほめていこうということですね。