引くと書いてないけど「引き算」だとわかる感覚

2年生くらいの子の親御さんから、「計算が得意だったのに、計算塾へ行き始めてから算数の成績が伸び悩んでいます」という相談を受けることがあるのですが、そういう子を注意して見ていると、算数が伸びないのは計算塾へ通ったことが原因ではないことがはっきりとわかります。

引き算でも似たような例がいくつもあり、「小鳥が10羽います。3羽逃げました。何羽残っていますか?」と問題文にあるとき、「逃げる……って?」となるのです。

これが「10-3」と書いてあれば計算できますが、「逃げる」=「引く」が結びつかないのです。

なかには、「何羽残っていますか?」という文章の最後だけを見て、「います」と堂々と答える子は低学年ではけっこうな数がいます。

教科書や問題集をよく見ていただくとわかるのですが、文章問題は「増えると」「減ると」、「足りないのは」「残りは」など、さまざまな表現がなされています。

1年生の算数の学習で重要なのは、「足すって書いてないけど、これは足し算だよね」「引き算しろってことだよね」と、子ども自身が自分の感覚でわかるようになることです。

ですから、お子さんが文章問題でうんうんうなっている様子を見て、「これは、10-3ってことでしょう?」などと肝心なところを先走ってしまうと、考えるヒントになるどころか学びのチャンスをふいにしてしまっていることを、知っておいていただきたいと思います。

小さいうちから実物と名詞を対応させるノウハウとして、「小鳥が10羽いて、3羽逃げちゃったってことは、3羽どこかにいなくなっちゃったんだね」「数が減ったのかな?」「じゃあ引き算だよね」というふうに、「逃げる」=「引く」が結びつくような会話をしてみるといいでしょう。

このように、言葉を使って考えることを習慣づけるにも、親御さんからの問いかけがやはり大切なのです。

そして、語彙ごいを増やす工夫をしていきましょう。実践ポイントは三つです。

一つ目は、小さいうちから実物と名詞を対応させることです。「9月になってナシの季節だね」など、買い物や散歩で見かけた物の名前を意識して会話に登場させます。

二つ目は、数を数えるときにいちいち単位をつけることです。「ゾウが2頭」「トンボは匹でもいいけど頭もあり」「イスが4脚」など、物の数え方に違いがあることを伝えていきます。

三つ目は、子どもにはわからないだろうと決めつけずに、いろいろな話を聞かせてあげることです。

わざと難しい言葉を使った後に、「それって○○って意味だけどね」とさりげなく「通訳」します。一つのものごとを示すのに、いろんな言い方があることがわかってきます。

「言葉の理解」を高める機会は、日常のなかにたくさんあります。