リンゴを丸に置き換えるイメージ思考の大切さ
前項目で、リンゴがナシに替わると文章問題が解けない5年生の子の例を挙げました。このようなとき、私たちが子どもたちにどう教えているのかをここで紹介したいと思います。
何をするのかというと、まずリンゴやナシの絵を描くのです。このとき、「先生、絵が下手なんだよね」とか「今日はあまり時間がないから」とかなんとか言って、「これ、丸だけどリンゴの意味ね。ピュッと枝を1本生やしておくね」と、リンゴに見えないリンゴのような丸を適当に描きます。
小さな子どもたちの頭の中では、リンゴは丸くて赤くてピカピカしています。幼児用のドリル、小学校の教科書、小学生向けの問題集など、どれもリンゴといえばそのような姿です。
子どもが頭でイメージしているその固定観念から、なんとかして離れてもらう作業を行うのです。少々難しい言い方をすると、「具体」から「抽象」へ、概念を移行させるのです。
例に挙げた5年生の場合は、これを何十回かやったところで、リンゴもミカンもナシもイチゴもみんな、丸みたいな形になっても数え方は同じと、頭の中でつながったようでした。
リンゴやナシの絵ではなくただの丸でも受け入れられるようになり、抽象化に対応できるようになっていくと、リンゴ5個は数字の「5」に、ナシ3個は数字の「3」として頭の中で認識されます。すると、「足し算をすればいいんだな」とシンプルに考えられるようになります。
しかし、リンゴがリンゴのまま、ナシがナシのままで頭の中に存在していると、何をどうすればこの問題が解けるのかわからず、こんがらがってしまうのです。