「できる営業」と「できない営業」の違い

本稿では、「できる営業」と「できない営業」を、次のように定義しておきます。

●できる営業
自分なりの成功法則を見出して、結果を継続的に出し続けている営業です。目標とする上司や先輩を持ち、日々試行錯誤を繰り返すなど努力を続けています。
しかし、自社ではトップであっても、世間にはもっとすごい人がいるものです。今の地位に満足せず、さらなるレベルアップを目指して科学的な努力を続けていくことが求められます。

●できない営業
自分なりにがんばってはいるものの、なかなか思うように結果の出ない発展途上の営業、あるいは、営業を体系立てて教えられたことがないので、自己流で良かれと思ってやっている営業です。
聞きかじった精神論や手っ取り早いテクニックを試してみますが、それだけではうまくいかない「迷える営業」とも言えます。

業績の悪い店舗は集客作業の時間が少ない

「最低限の当たり前のことなんて、誰でもできているだろう」と思うかもしれません。

ところが、当たり前のことが頭でわかっていても、本当にできているかどうかとなると、別の話です。

当たり前のことを実践することの難しさを示す例として、自動車販売の話を紹介します。

誰もが知る自動車販売店の統括責任者が、業績が良い店舗と悪い店舗の行動パターンの違いを調べるために、首都圏30店舗で現場の社員が実際に業務に使った時間を測った時の話です。

図表1をご覧ください。

わかりやすいように、その中で一番業績の良い店舗のデータを上に、一番業績の悪い店舗のデータを下に示しています。

縦軸は、業績を伸ばすために本部から指導している「やるべき業務の優先度」、横軸は「社員が実際に各業務に使った時間」です。やるべき業務が「当たり前のこと」です。

これを見ると、さすがに両店舗とも店に足を運んでくれたお客様への対応はきちんとしていているため、「来客対応」は同じように右上の一番上の位置にあります。

違いとしては、業績の良い店舗では来店してもらうために必要な新聞広告やチラシ配布などの「集客作業」や、来店してくれた見込み客に対する訪問や電話などの「フォロー」が右上にあり、やるべき業務をきちんと行っているのがわかります。

その結果、自ら積極的に集客・開拓した「集客商談」も多くなっています。

しかし、業績の悪い店舗は、「集客作業」と「フォロー」が左上にあり、いずれも十分には時間が費やされていません。その反面、「勉強会」や「清掃」など、それほど力を入れなくてもいい業務の時間が比較的多くなっています。