これは単なる「便利ツール」ではない
昨年11月に一般公開された、対話型AIのChatGPTの利用者が世界で急増している。今までは、ネットの検索エンジンにキーワードを入力することで答えを探すことが多かったが、このChatGPTは、文章で質問すると、AIが対話するように答えを提示してくれる。アメリカのAI研究組織、OpenAIが開発したAIチャットボットで、初期にはイーロン・マスクも投資していた。
しかし、そのChatGPTよりも、ここ数週間欧米のメディアで話題を独占しているものがある。それは、2月初めに限定公開された、マイクロソフト社のアップデートされた検索エンジン、BingのAIチャットボットだ。
断っておくが、私はAIの専門家ではない。そんな私でも、このAIをめぐる話題が面白すぎて、すぐに目が離せなくなってしまった。
これまでも、大学のレポートの宿題をChatGPTに書かせた事例などが話題になり、AIチャットボットについては「人間の代わりに調べものをして文章を書いてくれる便利ツール」といった捉え方をした記事をたくさん目にした。しかし、Bingをめぐる海外メディアのニュースからは、とてもそれどころではない“可能性”または“恐ろしさ”を秘めた技術になりつつあることが見え始めていた。
AIチャットボットとの“対話”
きっかけはニューヨークタイムズのポッドキャストだった。そこではニューヨークタイムズのテクノロジーコラムニスト、ケビン・ルース氏が、Bingと“対話”した経験を語っていた。
BingのAIは、検索機能とチャット機能から成り立っている。従来型の、検索ボックスにキーワードを入力して行う検索の能力も向上したようだが、結果の見え方は他のネット検索とさほど変わらない。問題は、会話をするかのようにAIが質問に答えてくれるチャット機能の方だ。
ルース氏が「シドニー」というコードネームを持つこのチャットボットと2時間あまり会話したところ、シドニーは、サイコパスやストーカーのようなふるまいを始めたというのだ。ルース氏はこの会話の全容を記事にしている。