ダーウィンの進化論は現代のビジネスにも生かせる
ダーウィンの進化論を理解していれば、いいものが売れるのではなく、売れたものがいいものだとわかります。テクノロジーはどんどん進化し、人々の意識や社会の風習も変わっていくのです。だけどどう変わるのかは予測できません。生き延びるためには、目の前で起きている変化に適応するほかないのです。
160年も前に書かれたダーウィンの進化論は現代のビジネスにも生かせます。だからぼくは、古典を読み続けるのです。
立命館アジア太平洋大学(APU)の学長の仕事でも進化論が役に立っています。スタッフから、「このプラン、しっかり考え抜いたので、やってもいいですか」と聞かれると、ぼくは「考え抜くのは時間の無駄やで」と答えています。学生が喜ぶかどうかはわからないので、まずやってみて喜んだら動けばいい。学生の意見も聞かず、自分らだけで議論して「これ、絶対喜ぶはずや」なんて言うてたらあかんで、と。
世の中は常に変化していて、学生も変わっています。しかもAPUは学生の半分が日本以外の国や地域から来ている外国人ですから、日本人だけで考えても学生が喜ぶものをつくれるはずがないんです。それなのに、ついプロダクトアウト的な発想で、「自分たちがしっかり考えれば、いいものがつくれる」と思い込んでしまう。
運とは「適当なタイミングで、適当な場所にいること」
ぼくがそうだったように、人間は、何が起こるかわからないということをつい忘れます。何が起こるかわからないということは、生き残るのは、目の前で起きていることに適応できたものだけだということ。だから思いついたことを全部やってみて、学生が喜んで、ワクワク、ドキドキしてくれたものを続ければいいんです。
ダーウィンの考え方は、あらゆるビジネス、日常生活に役に立つことがわかっていただけるでしょうか。いくらAIが進化したところで、人間も生物ですから、ダーウィンの進化論は、この先もずっと役に立ちます。
ダーウィンは、生物が生き残るために必要なのは運と適応だと言いました。次は運について考えましょう。みなさんは、人間社会で「運」とはどういうことを指すと思いますか。
ぼくは、「適当なタイミングで、適当な場所にいること」だと思っています。たとえば、棚から落ちてくるぼた餅を手に入れようと思ったら、どうすればいいか。どんなに調べても、いつ、どこに落ちてくるかはわからない。だとしたら対策することはできませんね。つまり落ちてくるタイミングでたまたま棚の近くにいた人が、ぼた餅を手にすることができるんです。