勉強や習い事は何歳から始めればいいのか。早く始めるほど効果が出るのか。『高学歴親という病』(講談社+α新書)の著者で、文教大学教授の成田奈緒子さんは「過度な早期教育は、子供の成長に悪影響を及ぼす。親同士で張り合ってはいけない」という――。(第3回/全3回)
教育の概念、彼の机の上で一生懸命勉強している少年
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「うちは二次関数でもうダメよ」

第2回から続く

――書籍の中では、5歳の子どもにサイン・コサインを習わせている親御さんがいるというお話もインパクトがありました。

【成田奈緒子】3歳の子どもに九九を教える幼稚園の話でのお話ですね。さらに私が驚いたのは、もう一人の親御さんが「うちは二次関数で、もうダメよ」と言ったことです。

――信じがたい光景ですね……。

【成田】疑いたくなるのももっともですが、現実です。私に言わせれば、5歳のサイン・コサインも二次関数も3歳の九九も、内容を理解せずに暗記しているだけなので、ほとんど意味がありません。

早期教育に精を出す高学歴親の方々が「子どもは可能性のかたまりだ」と考えている点には、私も同意します。でも、その方法が間違っていることに気付いてほしいと思います。

習い事のストレスで歯がなくなった子ども

――行き過ぎた早期教育には、どんな問題があるのでしょうか。

【成田】第1回の記事でも紹介しましたが、週に6回の習い事をさせられていた6歳の男の子がいました。その子は夜中に泣き叫ぶ夜驚の症状と歯ぎしりがひどいということで受診されたのですが、口の中を見てみたら、歯がなくなっていたんです。

――原因は習い事のストレスでしょうか……。

【成田】ストレスもありますし、睡眠時間も大きいでしょうね。6歳では10時間は寝たほうがいいですから。この男児は、よく眠るようになってから夜驚も歯ぎしりも一切なくなりました。睡眠はそれぐらい大事なんですよね。