「読めば解ける」問題も情報を適当に拾い不正解に

小学校の算数のテストも、親世代の計算力重視の時代から見ると、明らかに問題が読解力重視に変わっている。それが特にわかりやすいのが、全国の小学6年生と中学3年生が一斉に受ける全国学力・学習状況調査(以下、学力調査)の問題だろう。

実際に読解力を問われる問題として、どのような内容のものが出されているのか。20年にわたる学習塾での指導経験を生かして、去年の8月に書籍『玉井式 公式にたよらない「算数的読解力」が12歳までに身につく本』(KADOKAWA)を発行した玉井満代さんに話を聞いた。

「10年ほど前から小学校の算数にも読解力が必要と言われはじめており、学力調査の問題をはじめとして教育現場では、読解力を必要とする問題が増えてきています。平成30(2018)年度学力調査小学校・算数Aの大問2(図表3参照)はいい例でしょう。『答えが12÷0.8の式で求められる問題を、下の1から4までの中からすべて選んで、その番号を書きましょう』という問題です。選択肢の1から4には12と0.8の二つの数を使った、異なる場面の文章題が並んでいて、正解するには一文ずつ読んで立式することが必要です。単に12÷0.8の計算問題を解けるというだけでなく、小数の割り算がどんな場面で使えるかを文章で理解する力が問われているのです」

ちなみにこの問題は約60%の生徒が解けなかった。この問題の選択肢に『1mの重さが12kgの鉄の棒があります。この鉄の棒0.8mの重さは何kgですか』がある。これは12×0.8というかけ算を使う問題文で、正しくない選択肢だ。だが、実際にはこの文章題を「12÷0.8の式で求められる」と間違えた子が30%以上(約33万人)もいたという。

「12÷0.8=15ですよね。1mの棒が12kgなのに、0.8mと短くなった棒が元の重さより重くなるはずがないということに気づけていないのです」と玉井さんは分析する。

『プレジデントFamily2023年冬号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2023年冬号』の特集は、「読解力」の家庭での伸ばし方。「文章を読める子が“新受験”を制す」「なぜ算数の“文章題”だと解けないのか」「食いっぱぐれないために大事なこと 自分で稼げる子にする!」などを掲載している。

複数の図表から、必要な情報を読み取る問題も頻出するようになっている。例えば、平成30(2018)年度学力調査小学校・算数Bの大問3(2)は計算する必要がない。文やグラフの読解のみで正解できる内容だった。

「これは『人数』を示したグラフ1(棒グラフ)と、『人数の割合』を示したグラフ2(帯グラフ)を読みとる問題です。それぞれのグラフが“何を表す”かを正しく読み取る力を試しています。算数では、問題文や選択肢の文章を読む力だけではなく、この問題のようにグラフや図表などを読み解く力も必要なのです」(玉井さん)

ちなみに、グラフ1(棒グラフ)から読み取るべき情報を、グラフ2(帯グラフ)から読み取ろうとしてしまい、間違えた子が続出。全66.7%(約70万人)もいたそうだ。問題文で、「人数の割合」ではなく、「人数」を聞かれていることが読めていないのだ。