高速道路を無料にできない根本原因

なぜ、こんなことになってしまっているのか。

その元凶となっているのが、「債務の償還主義」だ。

高速道路の基本的な考え方は「ユーザーが応能負担し、かかった費用を返済できたら無料にする」というものだ。高速道路は最初に莫大な費用をかけて建設される。その費用を高速道路料金として徴収し、返済に充てていくのだ。

その仕組みはこうだ。

2005年に道路公団が民営化されてNEXCO東日本、中日本、西日本の3社に分割された。

道路公団が保有していた債務は40兆円あったが、それは「独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構」に承継された。

NEXCO3社はドライバーから徴収した料金収入からこの機構に毎年返済していく。それでも、昨年3月末時点での債務残高はなんと28兆2714億円に上る。要するにNEXCO3社がこの債務残高の返済を終えない限り、高速道路は無料にならないということでもある。

ただし、道路を維持していくためには一定の補修などランニングコストも必要になる。現在は料金収入のうち2割程度がランニングコスト、8割程度が償還に充てられている。

【図表】令和3年度の債務残高の推移
出典=日本高速道路保有・債務返済機構「債務残高の推移(決算ベース)

将来の無料化より、今すぐ料金を安くするべきだ

こうした政府の償還主義を厳しく批判する人がいる。近藤宙時氏との共著『地域格差の正体 高速道路の定額化で日本の「動脈」に血を通わす』(クロスメディア・パブリッシング)がある元トヨタ自動車副社長の栗岡完爾氏だ。彼はこの償還主義こそが日本における高速道路の価値を下げていると断じる。

「これから100年の間に償還すると言っているが、アホとしか言いようがない。『あんたは100年後も生きとるんか』という話だ。例えば、高速道路の先につながっている港湾や空港は無料化を前提とした償還主義ではやっていない。永久に有料です。どれも構築物なのだから補修する費用は必要になるのは当たり前のことです」

28兆円にものぼる莫大な債務を償還するために世界一高い高速道路料金となってしまっており、それが高速道路の活用を妨げている――。そこで栗岡氏は、「『将来の無料化』というこだわりを捨てて、高速道路料金を安くするべきだ」と語る。

中央道・三鷹料金所
写真=iStock.com/501room
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高速道路の料金は基本的に「ターミナルチャージ(150円)+距離料金(1キロ当たり24.6円)」である。

「これでは1キロ走るごとに関所を通るようなもので、目的地を遠ざける愚策です。そもそも飛行機や新幹線、電車にタクシーといった交通機関は『乗っけてもらう』ものです。ところが高速道路は自ら車を用意して、ガソリン代をかけた上、自分で運転する。それなのに他の交通機関のように『乗った距離に応じてお金を支払う』という発想がおかしいのです」