菅前首相は「特定の課題担当の副総理」に期待
菅義偉内閣は、1年間だけにしては新型コロナのワクチン接種の遅れ取り戻し、マイナンバーカードの普及率向上、携帯料金値下げなどなかなかの仕事をした。本来、こういう大災害のときは、改革を行う千載一遇のチャンスともいえる。阪神・淡路大震災と東日本大震災のときはうまくできなかったので、菅内閣はよくやったと思う。
ただ、短期政権に終わったことについて、本人の政治力のなさも一因なので、7点あたりが限度だ。東京五輪・パラリンピックを無観客にしたのも後味悪い。再登板の声もあるが、むしろ、たとえば、医療問題など特定の課題担当の副総理などやってみてほしい。
岸田首相については、まだ在職なので最終的な点数をつけられないが、ここでの評価は、もし突然、いま、首相を続けられなくなったらという前提で6点をつけた。
プレジデントオンラインの記事〈「後見役の安倍氏がいなくなったら何もできない」岸田首相が“冴えない政治”を続ける根本原因〉で解説したように、安倍晋三という後ろ盾がある限りは悪い首相ではなかった。厳しい前評判だった2021年の総選挙も2022年の参議院選挙も無難以上に乗り切り、衆議院を解散しない限りは国政選挙がない「黄金の3年間」のお膳立てに成功した。
その時点なら7点から8点をうかがっていた。
「お手並み拝見」となる今後の三大ポイント
しかし、減点となる対応も目立った。旧統一教会問題の処理では、被害者対策が必要である一方で、テロに報酬を与えるような印象は避けるべきだった。それにもかかわらず、戦前のいつか来た道の時代と同様に、テロや超法規的措置を肯定する風潮をつくってしまったのかもしれない。
外交もあまりにも対米従属で、日本の真の首相はラーム・エマニュエル駐日米国大使ではないかと言いたくなる。安倍首相ならば、ウクライナ紛争を世界の不幸にしないためにも、日本の独自の国益を守るためにも、それなりの役割を果たしたはずだ。
長年の間、首相候補だったにもかかわらず、政権を支える側近集団を育てていなかったり、無理を押して長男の翔太郎氏を首相秘書官に就けたりしたのもお粗末だ。コロナ対策もメリハリがなく、経済回復を遅らせたり、無用に死者を増やしたりしている。
「異次元の少子化対策」を打ち出すとか、リベラル寄りの立場にもかかわらず防衛力の増強を、財源論から逃げずに取り組もうとしている点は、成功したら素晴らしいことなので今後に期待したい。しかし、これらを実現するためには、相当思い切って志が高いスタッフや補佐官を準備し、ブレーン集団をつくり直すことが急務だろう。
また今年5月には、岸田首相の地元・広島でG7サミットが開かれる。議長国として、世界の核軍縮という長期的な目標に踏み込めれば大きな功績となる。現段階の6点から評価を上げるのか下げるのか、これからがまさに「お手並み拝見」ということなのだ。